20年のキャリアの「初めて」が詰まった写真集
小学生の頃に芸能界に足を踏み入れた夏帆さんは、昨年6月に30歳を迎えた。
2019年9月から2年半かけて撮り溜めた写真集『おとととい』は、約20年のキャリアの中で初めて「やりたい」と手を挙げて作り上げた作品だという。
紙の本に並々ならぬ愛がある夏帆さんが写真集に込めたこだわりとは。
そして、30歳の節目を迎えて変化した「人見知りな人好き」のコミュニケーション法に迫ります。
――写真集を作りたいと思ったきっかけは?
子供の頃から本が大好きで、いつか紙の書籍で作品を作りたいというのが目標であり夢でした。本屋さんで素敵な装丁の本を見つけると、思わず手に取ってしまうことが多かったんです。
写真集も好きで、写真家さんの作品集や被写体にフォーカスした写真集など、その世界観を普段からよく眺めていました。これまで2冊写真集を出させていただいていますが、どちらかというと被写体としての参加で、方向性やコンセプトについては関わってこなかったんです。今回は方向性やスタッフ選び含め、ゼロから作らせていただきました。
――こだわった点は?
20代の後半から30歳になるまでを撮影したのですが、その時好きなものや表現したいこと、内面的なことも含めてちゃんと形に残したいと思ったんです。作られた世界観よりも、日常の延長線上にある世界で作品を作りたいと思いました。
というのも、年齢を重ねていくと、どんどん時間が経つのが早くなっていくじゃないですか。「もう1年経ったんだ!」みたいに。私自身、いろんな出会いや別れがあったり、周りの人たちの環境が変わっていくことで、「ずっと同じ場所にいることはできないんだな」と感じることが20代後半から多くなってきたんです。
目の前にある日常を形に残すだけだったら個人的に写真を撮ればいいのですが、せっかくこのお仕事をしているので、作品としてみなさんと共有できたらいいなと思ったんです。
――撮影を23歳の写真家・石田真澄さんにお願いしたのは?
写真集のオファーをする前に、一度だけ撮影でご一緒したことがあって。半日ぐらいの撮影だったのですが、すごく距離感が絶妙な方だなと思ったんです。撮られているのかわからないくらいすごくフラットにすーっと写真を撮る方で。だからこそ撮られている私も構えないし、心地いい距離感が印象的でした。
写真集を作りたいと言っておきながら、実は撮られることがすごく苦手なんです。だからこそ、真澄ちゃんの近すぎず遠すぎない距離感が心地よかったんですよね。それでぜひお願いしたいと思ってお声がけしました。最初はお互い人見知りだったのですごく距離があったのですが、2年半かけてどんどん変わっていった2人の距離感も、写真に出ていると思います。
2022.04.08(金)
文=松山 梢
撮影=鈴木七絵
メイク=石川奈緒記
スタイリスト=清水奈緒美