“私自身”で世の中に出るのは初めてな気がする

――2年半の写真を見返してみて思うことは?

 あっという間でしたね。撮影の裏では仕事でもプライベートでも色々あった2年半で。自分自身を見つめ直すことが多かったんです。ちゃんと時間の積み重ねが写っていると思います。

 とはいえ写真集は時系列に並べているわけではないんです。これは真澄ちゃんからの提案だったのですが、記憶を思い出す時って、昨日のことを思い出したり、数年前のことを思い出したり別に時系列で思い出すわけじゃないですよね。真澄ちゃんと二人きりで沖縄や北海道などいろんな場所に旅行に行って、そういうのも全部バラバラに入っていますが、しっかりとした流れがある写真集になったと思います。

 思い入れのある写真ばかりなので、特にこれが好きと一枚あげるのは難しいのですが、真澄ちゃんの撮る後ろ姿がすごく好きだなと思いました。顔が写っていなくても、いろんなことが伝わる気がします。

――これまでに自分発信で何かを作った経験は?

 これが初めてです。ずっと写真集を作りたいとは思っていたけれど、なんだか自信がなくて。私がやっていいのかな……って思ってしまったところがあったんです。だけど、もうそろそろいいかなと思って。そのことを事務所の方に言ったら思いの外すんなりと受け入れてくれました。

 普段私が表に出る時は、何かを演じていることが多いんです。誰かが作った世界の中で、自分じゃない名前で呼ばれて、自分じゃない人物を演じる。SNSもやっていないので、私自身で世の中に出るのは実はこれが初めてな気がします。バラエティ番組に出る時とも、こうして取材を受ける時とも違って、もうちょっとパーソナルというか。そう思うとなんだか恥ずかしいですね。

 ただ、自分の内面が出ているとは思うけど、100%の素顔ともまた違うし、プライベートをお見せしたいという感じとも違います。あくまでも真澄ちゃんと私が作り上げた空気感が映し出されていると思います。

――ゼロから写真集を作り上げたことは、夏帆さんにとっても大きな自信になったのでは?

 そうですね。自分で言うのもなんですが、本当に素敵な本が出来たと思っています。もちろん多くの人に手に取ってほしいし見てほしいと言う思いはありますが、消費されていくものではなく、ちゃんと残る本を作りたいと言うことは一貫して思っていて。

 最初は私と真澄ちゃんと事務所の方と進めていたのですが、途中から編集の方に入っていただきましたし、写真を撮り終わった後はアートディレクターの方に入っていただきました。

 改めて、1人で何かを作り出すのではなく、誰かと一緒に物を作り出す作業が好きだなと思ったし、すごくすごく楽しかったんです。もうなんか、ずっとこの時が続けばいいのにと思ったくらい、本を作るってこんなに楽しいんだと思いました。「これが噂の色校チェックか!」って思ったり(笑)。

 ゼロから作り上げることは自分には無理だと思っていたけれど、誰かと一緒だったらできるかもしれないなと思える機会になりました。

 今回は被写体が自分だったので判断基準がわからずセレクトが大変だったんですけど、もともと本が大好きなので、人の写真集を作ってみたいなと思ったくらい、編集作業が楽しかったです。

2022.04.08(金)
文=松山 梢
撮影=鈴木七絵
メイク=石川奈緒記
スタイリスト=清水奈緒美