30歳までに何かを成し遂げなきゃと思っていたけれど
――写真集では20代後半から30歳になるまでを写していますが、夏帆さん自身、30歳をどう捉えていましたか？
20代中盤くらいはものすごく意識していたんです。30歳までに何かを残さなきゃとか、何かを成し遂げなきゃとすごく思っていました。無理に大人にならなきゃいけないと思っていたんでしょうね。
20代はそれなりに悩んだり辛い時期もありましたが、今思うとそういう時期を経験しておいてよかったなって。30代は何事も楽しみたいという思いが強いし、すごく気持ちが楽になったと思います。
――具体的にどんなことを楽しみたいですか？
最近、人と会うのが好きなんだなってすごく思うんです。今はコロナ禍でなかなか新しい人と出会うのは難しいですけど、人と会って、その人の感性に触れて、刺激を受けるのが好きだなって。
――人見知りなのに？
そう、ものすごく人見知りなのに人と会うのが好きっていう、矛盾(笑)。多分、人とコミュニケーションを取るのが上手くないうえに、緊張しいなのと恥ずかしがり屋なんです。いや、それを人見知りって言うのか……。
でも人の話を聞くことも好きだし、そこから生まれる化学反応も、自分の世界が広がるのも好き。だからこそ、自分も相手に対して何かを投げられたらいいなと思っています。
――そう思うようになってから、コミュニケーションに変化は？
今までは外に出るのってドキドキするから、自分の慣れ親しんだ世界にしかいなかったんです。でも今は誘ってもらったら勇気を出して行ってみようというマインドに変化しました。
――最近した新しいことは？
今はコロナ禍でなかなか新しいことに出会えていないのが現状です。実は昨年末に友達に、「今年一番おもしろかったことや一番印象に残ったカルチャーは？」と聞かれて全然出てこなかったんです。
映画とか演劇とか音楽とか、いろいろ触れたはずなのにパッと思い浮かばなくて。すごく落ち込んで、「私の1年は何だったの？」って思っちゃって。これからは意識的に日常の出来事を覚えていきたいなと思ったところ。
もちろん、今年は写真集づくりが大きな思い出として残りますし、本作りで経験したワクワクは、きっとこれからも忘れないと思います。
夏帆(かほ)
1991年6月30日生まれ。東京都出身。2004年に女優デビュー。2015年公開『海街diary』では日本アカデミー賞優秀助演女優賞受賞。2020年公開の主演映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』では第43回高崎映画祭最優秀主演女優賞を受賞。
夏帆 写真集『おとととい』
撮影：石田真澄
発売日：2022年4月9日(土)
価格：3,520円(本体 3,200 円＋税)
発行：SDP
http://www.stardustpictures.co.jp/book/2022/otototoi.html
2022.04.08(金)
文＝松山 梢
撮影＝鈴木七絵
メイク＝石川奈緒記
スタイリスト＝清水奈緒美
