のんにとってのヒーローは誰?

――「ヒーロー」とは、いわゆる「スーパーヒーロー」とか「英雄」という捉え方ですよね?

 あ、私、スーパーヒーローものが大好きなんですよ! ロバート・ダウニー・Jr.が大好きで、『アイアンマン』も『シャーロック・ホームズ』(ガイ・リッチー監督)も好きなんです。ああいう「才能があるんだけど子供っぽくて嫌なやつ」だけど、それでいてヒーローのポジションというのがいいなと思うんです。立ち位置的に、ミー坊はヒロインじゃなくてヒーローじゃないですか。

――そうですね。

 ミー坊がお魚好きなことが変わらないことでみんながうれしがるし、ミー坊のお魚好きのおかげで人生が変わる友達もいますし、「ミー坊に勇気をもらえると思うんだ」ということからお魚の番組を作ってくれたりとか。ミー坊は「好き」の気持ちで人を動かしていくパワーのある人だから、そういう面で、とてもヒーローっぽいヒーローだなと思います。

――のんさんにとって、実生活でヒーローにあたる人はいますか?

 ブルーハーツの(甲本)ヒロトさん、RCサクセションの(忌野)清志郎さん、矢野顕子さんが大好きです。そういう人たちが、私にとってのヒーローだったりします。今回の『さかなのこ』で、ミー坊がみんなのヒーローになったらいいなと思いますね。

――ヒーローっぽさや、ミー坊が好きなことに対してまっすぐに生きていることで周りにいい影響を与えること、その役割は意識して演じられていたんですか?

 そうですね。劇中でミー坊が「あいつ、物語の主人公みたいだよな」と言われるじゃないですか。そのあたりは、ものすごく意識していました。

 例えば、ミー坊が不良の中心にいて、みんなが翻弄されるところ。みんなが「イカ、(海で)獲れんの?」と煽って、ミー坊が「獲れるよ!」と言ってアオリイカを仕留めたときに、みんなが「すげぇっ!!」となるじゃないですか。ああいうパワフルさは格好良く見せたいなと思ってやっていました。

――格好いいし、潔いですし。アオリイカを獲るシーンでは、実際に海の中にドボンとされたんですよね?

 あれは全部自分でやっています‼ 本当です(笑)!

――非常に力強くおっしゃってくれました(笑)。不良仲間たち、柳楽優弥さんや磯村勇斗さんたちとのシーンは、どれも温かく心に残ります。

 撮影は、本当にずーっと楽しかったですね。……(思い出した様子で)ああ、楽しかったー! キャストの皆さんが『さかなのこ』のお話自体や沖田組のこと、演技のことを愛しているのが伝わってくるような、本当に演技愛にあふれた方しかいなかったんです。不良の方たちも、総長(磯村勇斗)とかヒヨさん(柳楽優弥)はじめ、みんなそうでした。心地よくて、最高でした。こんな素敵な空間で演技ができるなんて……そのくらい多幸感にあふれた現場でした。

――真ん中にのんさんがいたから、より多幸感にあふれた空気になっていたんじゃないですか?

 いやあ……そんな、まあ、まあ、まあ。そうかもしれませんね(笑)。

2022.09.01(木)
文=赤山恭子
撮影=深野未季