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外国人の入場料はマレーシア人のほぼ倍

 イーイーが5歳、シェンイーが2歳となった2023年8月25日(金)、ネガラ動物園は2頭が8月29日(火)に中国へ行くと発表しました。突然の発表で、出発まで4日しかありません。

 筆者はLCC(格安航空会社)の航空券を買って8月28日(月)夜に日本を発ち、翌29日(火)早朝にクアラルンプール空港に到着しました。高速鉄道に30分ほど乗って「KLセントラル」駅へ行き、LRTのクラナ・ジャヤ・ライン(プトラLRT)に乗り換え、およそ30分で「ワンサ・マジュ」駅に到着。駅からタクシーに乗って約10分後、ネガラ動物園に着きました。切符の購入と乗り換え時間を含め合計1時間半かかったので、クアラルンプール空港からタクシーや配車アプリGrab(グラブ)の車で一気に動物園まで行く方が早いです。

 ネガラ動物園の大人の入場料は、マレーシア人なら45リンギット(約1,400円)で、60歳以上ならさらに安くなります。外国人は、マレーシアでの労働許可証のある人などは50リンギット(約1,500円)。しかし、その他の外国人は88リンギット(約2,800円)とマレーシア人のほぼ倍で、60歳以上でも割引はありません。(以上、2023年12月時点)。

中国大使や副大臣がパンダのお別れ会に出席

 この日はパンダ館でお別れ会が開催されました。報道関係者の申し込みは前日に締め切られ、申し込めるのは1社につき2人まで。スタッフに尋ねると、約20社が申し込んでいて、日本人は筆者だけとのことでした。

 パンダ館では午前11時ごろから来賓が姿を見せ始めました。国立動物園のためか、駐マレーシア中国大使や、マレーシア天然資源・環境・気候変動省の副大臣らも出席しました。

 ただ、「主役」のイーイーとシェンイーの姿はありません。検疫のため公開されていないのです。そこで来賓らは、イーイーとシェンイーの母親・リャンリャン(靚靚)と父親・シンシン(興興)を観覧しました。

貨物機で約4時間後に成都到着

 イーイーとシェンイーがパンダ館を出たのは午後4時30分過ぎ。1頭ずつケージに入った状態で運び出され、フォークリフトでゆっくりと車に積まれました。姉妹は別々の車にのせられます。最初はイーイー。次がシェンイー。イーイーは落ち着かないのか、時おりケージの中で立ち上がっていました。

 車がパンダ館を出発すると、園内では多くの観客が見送り、別れを告げました。手作りしたパンダの旗を振っている人や涙を流している人、抱き合い慰め合っている人もいました。

 姉妹が入ったケージをのせた車は30分ほどでクアラルンプール空港に到着。ケージはマレーシア航空の貨物機「MAS6476」便に積み込まれました。ネガラ動物園によると、輸送費を節約するため姉妹一緒に中国へ送ることにしたそうです。

 ネガラ動物園からは獣医師と飼育員の計2人が一緒に中国へ行き、数日間滞在します。貨物機は、現地時間で午後11時頃にクアラルンプール空港を飛び立ち、8月30日(水)午前3時過ぎに中国の成都双流空港に着陸しました。マレーシアと中国の間に時差はありません。

 成都の空港からどこへ行くのか、8月29日(火)にネガラ動物園の広報担当者に質問したところ、「政府の要請で答えられないことになっています」との回答でした。2頭の中国到着後、行き先は四川省にあるパンダセンターの「臥龍中華大熊猫苑神樹坪基地」(以下、神樹坪基地)だと判明しました。

2023.12.28(木)
文・撮影=中川美帆