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シェンイーに会うため中国の神樹坪基地へ行くと……

 イーイーとシェンイーは今後、神樹坪基地で繁殖を目指すのか、あるいはヌアンヌアンのようにほかの施設へ移されるのか、明らかになっていません。

 神樹坪基地は、野生のパンダの生息地に近く、夏でも比較的涼しい場所です。パンダは暑さが苦手なので、熱帯のマレーシアでは冷房の効いた屋内で過ごしていましたが、中国では屋外に出られます。

 筆者は2017年3月、2023年6月と10月に神樹坪基地を訪れました。2023年10月13日(金)は、イーイーはまだ公開されていないものの、シャンイーは検疫を終え、すでに屋外で公開されているとの情報を入手していたので行きました。でもシェンイーを目にすることは叶いませんでした。

 もしかしたら午前9時の開園直後なら、シェンイーは屋外にいたのかもしれませんが、あいにく筆者はこの日、早い時刻の長距離バスのチケットを取れず、到着が正午近くになってしまいました。屋内は非公開です。

東南アジア3カ国にパンダ5頭

 現在、東南アジアには3カ国に計5頭のパンダが暮らしています。この記事で紹介したマレーシアと、シンガポール、それからインドネシアのタマンサファリへ2017年9月28日にオスのツァイタオ(彩陶)とメスのフーチュン(湖春)が中国から来ました。フーチュンは、シンガポールにいるカイカイ(凱凱)の妹です。

 2023年の春までは東南アジアの4カ国にパンダがいました。4カ国の中で最も早い時期からパンダがいた(短期滞在のパンダは除く)のは、2003年10月12日に2頭が来たタイのチェンマイ動物園。しかし、同園で生まれたリンビン(林冰)が中国へ行き(参照:「中国でシャンシャンに再会(後編)」)、リンビンの父親のチュアンチュアン(創創)は2019年9月16日、母親のリンフイ(林恵)は2023年4月19日に息を引き取ったので、タイにはパンダがいなくなりました。

 ネガラ動物園には現在、3姉妹の両親であるシンシンとリャンリャンがいます。この2頭は、生年月日が同じで、2006年8月23日に四川省・臥龍で生まれました。四川省・雅安や北京で暮らしたこともあります。リャンリャンは2013年8月に中国でほかのオスとの間の息子ゴンゴン(貢貢)を生みました。

 シンシンとリャンリャンはマレーシアと中国の国交樹立40周年を記念して、2014年5月からマレーシアに貸し出されています。貸与期間は10年間なので、2024年5月に期限を迎えます。もし期限が延長されず、2頭が中国へ戻ることになり、新たなパンダが来なければ、タイに続きマレーシアからもパンダが姿を消すことになります。

中川 美帆 (なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

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2023.12.28(木)
文・撮影=中川美帆