シンガポールの隣国、マレーシアにもジャイアントパンダがいます。あまり知られていませんが、実はマレーシアは6年間で3回のパンダの繁殖に成功していて、これは中国国外で有数の実績です。マレーシアで生まれた5歳と2歳のパンダの姉妹は2023年8月末に中国へ旅立ちました。

マレーシアでパンダを飼育しているのは国立ネガラ動物園。これまでに3頭のメスのパンダが誕生しています。3姉妹の長女は、2015年8月18日に生まれたヌアンヌアン(暖暖)。ヌアンヌアンは2017年11月14日に中国へ渡りました。

ヌアンヌアンは渡航後、四川省にある「中国ジャイアントパンダ保護研究センター」(以下、パンダセンター)の「都江堰基地」で暮らしていました。
しかし2019年、南京に「紫清湖野生動物世界」という施設がオープンすると、そこへ移されました。筆者が同年11月にこの施設を訪ねたら、ヌアンヌアンのほか、アメリカやオーストリアで生まれたパンダもいて、過半数が中国国外で生まれたパンダでした。
ここでは衝撃的なことが起きました。観客に背を向けて食事中のヌアンヌアンを飼育員が竹竿で何度も叩いたのです。居合わせた観客が動画を撮影してネットにアップすると、紫清湖野生動物世界は2023年4月17日(月)、SNSで謝罪文を公表。「ヌアンヌアンが竹竿で帰宅(公開エリアからバックヤードに戻ること)を促されている動画」だと指摘し、調査して証拠を集めたうえで、この飼育員の同園でのパンダ飼育を一切禁止したと述べました。今後は飼育員の管理体制を強化し、こうした事件の再発防止に全力を尽くすとしています。

ネガラ動物園では、続いて次女のイーイー(誼誼)が2018年1月14日に生まれます。中国野生動物保護協会(CWCA)との協定に基づき、イーイーは2歳となった2020年に中国へ行く予定でしたが、コロナ禍で延期されました。
三女のシェンイー(升誼)が生まれたのは、コロナ禍の2021年5月31日。飼育員さんによると、イーイーは穏やか、シェンイーは活発な性格とのことです。

ネガラ動物園によると、同園は優れたパンダの飼育施設として2023年に中国から表彰されました。「この評価は、毎年ネガラ動物園を訪れる中国のパンダの専門家らによる調査の結果です。今年は7月26日(水)~28日(金)に来て、餌やりなどでパンダがどのように扱われているかを確認しました」(ネガラ動物園副プレジデントのロズリー@ラフマト・アフマト・ラナ氏)。
2023.12.28(木)
文・撮影=中川美帆