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娘たちが生後5カ月のときにはどんな旅をしていた?

 まず話題は、気になる自転車旅の荷物について。セリーヌさんが「自転車にわが家を積んでいます。自転車4台とトレーラー1台を含めて、たった200kgしかありません」と語った通り、この200kgの中には、夜間はマイナス10℃になることもある荒野での行動に必要なアウトドア用品を全て収納。さらに、ナイラちゃんとフィビーちゃんの勉強道具やダンス用のチュチュのほか、写真家のグザヴィエさんと、人類学者で作家のセリーヌさんが仕事をするための写真機材やパソコンなど、個人の荷物も含まれています。

「私たちにとって、より少ないことはより多いことなのです」と、荷物を極力減らさざるを得ない自転車旅をポジティブに語ったセリーヌさんでしたが、ナイラちゃんとフィビーちゃんが生まれた直後は、取捨選択に頭を悩ませることもあったそう。「ナイラとフィビーがそれぞれ生後5カ月のときに再び旅に出たのですが、赤ちゃんだった娘たちに必要なものを持たなければならなかったため、何が必要かの選択に迫られました。そこで私たちはおむつに頼りすぎない育児をすると決め、洗濯可能なおむつを4枚だけ持って行きました。また、2人とも母乳で育てることにし、哺乳瓶もおしゃぶりも使うことはありませんでした。でも圧力鍋は持っていき、彼女たちのために毎日新鮮な果物や野菜のピューレを作っていました」

 娘2人と旅をする暮らしを選んだことついて、セリーヌさんは「旅を通じて各々の成長ペースに寄り添い、彼女たちが自然の中で得られる驚きや、学習意欲を育むことを選びました。自然の中で、ナイラとフィビーは驚くほどの回復力と、変化に対応できる力を身につけました」と回答。さらに「旅をする私たちの人生はサプライズでできていて、何が、どのように、いつやってくるかはわかりません。娘たちにとってのサプライズとは、泳げる川があったり、友人や動物に出会えたりすること。それらが娘たちに“人生を信じること”を教えてくれているのだと思います」と自身の人生観を語りました。

2023.12.10(日)
文=石橋果奈
撮影=細田 忠
写真提供=パッシュファミリー