コール&レスポンスが発生しないものが好き
TaiTan TikTokなどは見ますか? TikTokって主導権はこっちにあるんだけど、快楽だけがずっと供給され続けている感じは本当に悪魔的によくできたサービスだと思います。
品田 一種、とても俗悪なものなんですけど、ここまでむき出しだとここから何か新しいものが出てくるんじゃないかって気がしてきますよね。
TaiTan 思います、思います。
品田 ねじを回しているだけの動画とか、食べものをひたすら切っているとか、女子高生がくねくねしているとか。それが交互に出てくるっていう。
TaiTan それこそ僕たちはインターネット的なものが血肉になっているので、こういった発言があったらこう広がっていくとか、そこにある力学ははんとなくわかっていると思うんですけど、TikTokの中に自分が入っていけるかと言われたら、やっぱりそれはまだ難しくて。TikTokにある磁場みたいなものに、体が馴染んでいかないんですよね。あくまでも「ツーリスト」として遠くに見ている。
品田 私たちの世代からしたら、到底受け入れられないというか、否定したくて仕方がないものというか。でも、ここから異様なものが生み出されていくんだろうって気はしますよね。
TaiTan トリックスターみたいな存在が登場したら面白いだろうと思います。
品田 YouTubeはよく見ますか?
TaiTan 寝る前に『おうち麺TV.』というチャンネルをよく見てます。コール&レスポンスが発生しないものが今は好きですね。彼らが勝手にやっているものを僕はただ見ているだけという、その関係性が好き。
品田 ああ、わかります。なんなんだろう、一種の反資本主義的な感覚があるのかもしれない。界隈的なものからある程度距離をとっているようなものをインターネット上から見つけたいという。
TaiTan すごい重要な指摘ですね。『おうち麺TV.』のような、界隈とかが発生していなくてすべてから切断されているものを見ていたい。
品田 私も磁石の玉をつなげていく動画とか見ています。根気だけでやっているチャンネルがあるんですよ(笑)。
TaiTan ただ、プリミティブな動画3選とかいって、『おうち麺TV.』と磁石、そしてDiggy-MO'さんが並んじゃったらまたそれは消費の始まりだから、難しいですね。
品田 話題の『ちょんまげ小僧』も、ほぼ誰も見ていないチャンネルだったんですよね。子どもが小さなコミュニティの中で自己満足しているところがちょっと笑えるし、尊さがあったのですが、見つかっちゃった。まぁ、わざわざ掘り起こしていくのは私たちみたいな連中なんですけど。
常に居心地の悪さを感じているから、人気のない場所を探している。でも見つけたらいっちゃうっていう。
2023.12.30(土)
文=高田真莉絵
撮影=平松市聖