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リゾート地で男女が事件に出くわす話が好き

――「トレンディドラマの作家」である以上、時代の変化に影響を受け、作風が変わった部分もあると思います。坂元さんご自身、今の時代の空気感をどう捉えていますか?

 最近思うこと……なんだろう。たまにニュースサイトを開くだけでも、常にいろいろな人が赤の他人のことで揉めていたりして、ちょっと息苦しいですよね。今は過渡期なので、まあそのうちいいところに落ち着くんじゃないかと、僕は楽観的に思っていますけど。

――その息苦しさは今後の作品に影響しそうですか?

 僕は怠けている人間なので、社会的な部分はあまり影響されないと思います。自分は本当に狭い仕事をしている脚本家で、ただそこに誰か人がいて、その姿が滑稽だったり、豊かだったり、退廃した視線で人間讃歌を書きたいだけなので。恥ずかしいことですけど、原稿の前から離れたら社会に対して責任を感じたりしてないし、そもそもできれば関わりたくない人間なんです。そういうバランスでやってるし、本当に申し訳ないけど、その分仕事を頑張るので許してくださいという気持ちでいます。

――新しい挑戦として誕生した『クレイジークルーズ』。今後書きたいテーマなどの構想はもうあるのでしょうか。

 狭いジャンルなのですが、本作のような、リゾート地でカップルが事件に出くわす話がやはり好きなんです。だから本当は一生こういう作品を何作も書き続けていたいんです。今回やっと書けたのですが、この二人がこんな事件に出くわしました、今回はスキー場です、今回は南の島です、ということを毎年できたら個人的には幸せなんですよね。『名探偵コナン』みたいに。まぁそれは実力がいることなので、実際に書けるかどうかわからないですけど。でも、もう今は来年、再来年の作品に関して書いています。だから、今後やりたいことといったら、2026年以降にやりたいことを考えないといけなくなるでしょ。さすがに思い浮かばないし、考えたくないですね。

2023.11.15(水)
文=綿貫大介
写真=橋本 篤
スタイリング=DAN(kelemmi)