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 10月24日(月)から放送されるドラマ「エルピス —希望、あるいは災い—」。長澤まさみさん4年半ぶりの連ドラ主演ということだけでなく、民放連続ドラマ初執筆となる渡辺あやさん(朝の連続テレビ小説「カーネーション」、映画『ジョゼと虎と魚たち』など)による脚本だというところも見逃せないポイントです。寡作で知られる渡辺あやさんを口説き落としたのは、数々のヒットドラマ(「カルテット」、「大豆田とわ子と三人の元夫」など)を手掛け、カンテレでも存在感を放つドラマプロデューサー・佐野亜裕美さん。今回は佐野さん立ち会いのもと、渡辺あやさんにお話を伺います。(インタビュー【後篇】を読む)


どこか欠けている人の方が魅力的にみえる

――渡辺さん脚本のドラマがまさか民放で見られる日がくるなんて思ってもみませんでした。ドラマファンにとってのこの悲願は佐野さんのご尽力あってのことだと思うのですが、お二人の出会いからお伺いできますか?

渡辺 出会いは2016年の春にさかのぼります。

佐野 昨日のことのように思い出せますね。ちょうど私がTBSで「99.9-刑事専門弁護士-」(2016年放送)という作品に携わっているときでした。あやさんがNHKとの打ち合わせのために東京に来ていて、ちょうど帰りのフライトまで時間があると伺い、会いに行ったんです。

渡辺 共通の知り合いであるスタイリストさんに「佐野ちゃんっていういい子がいて、会わせたい」と紹介されたんです。佐野さんについては「骨がある」という評判をよく業界の関係者からも聞いていました。

 ところが、初めてお会いしたときに、なんだかとてもつらそうな印象を受けたんです。「私なんて……」とでも言いそうな弱々しい雰囲気があった。あれだけみんなから評価されているのだから、もっと明るくて強気な感じの方が来ると想像していたのに。すごく小さくなろうとしていて、これは面白いなと思いました。

――オラオラな仕事人が来ると思っていたら、実際は真逆なタイプの人だったと。つらそうな印象というのも気になります。

渡辺 やはりものをつくるというのはとても難しいことなので、つらくなったり凹んだりして当たり前なところはあると思います。私は自信満々な人より、コンプレックスを抱えていたり、どこか欠けてるところがある人の方がつくり手として魅力的に感じる節があるんです。だからこそ、この人と一緒に作品をつくってみたいなと思いました。

2022.10.24(月)
文=綿貫大介