この記事の連載

 テレビ局を舞台に、スキャンダルによって落ち目となったアナウンサーとバラエティ番組の若手ディレクターらが冤罪事件の真相を追う社会派エンターテインメントドラマ「エルピス —希望、あるいは災い—」。前編では脚本家・渡辺あやさんとプロデューサー・佐野亜裕美さんの、出会いから波乱のドラマづくりの日々をお届けしました。紆余曲折あってやっとドラマ放送が決定した本作。後編はそれぞれの仕事に対する思いから、本作に込めたテーマや秘話までたっぷり語っていただきました。(インタビュー【前篇】を読む)


マスメディアの裏側まで描きたかった

――脚本の依頼から放送まで、足掛け6年。ドラマ制作でこんなに長い時間がかかることはあるものなのでしょうか。

渡辺 私史上、初ですよ。まぁ民放の連ドラ自体がそもそも初めてですけど。

――渡辺あや脚本のドラマが民放で観られる日がくるなんて思ってもみなかったので本当にうれしいです。しかもこんなに長い期間をかけてやっと……。

渡辺 当初の要望通り、ラブコメだったらもっとはやく公開できていたと思うんです。でも、テーマがテーマですからね。なぜこのドラマの内容にテレビ局が難色を示したかというと、マスメディアが犯罪などの事件や出来事に対して、誤報や、事実と確認されていないことを報道したらどういうことが起こるのかということが赤裸々に描かれているからだと思うんですよ。さらにはどこからどういう横やりが入るのか、報道がどのようにひるむのか、真実がどう闇に葬られていくのかということも。たぶん私と佐野さんが出会ったときからずっと抱えていた共通の問題意識は、権力の横暴とそれに従属するばかりのマスコミの報道姿勢のあり方なんですよね。それを燃料にして今回の脚本は書いてきたので。

――テレビ局が放送をためらうのも無理はないですね。そしてそれをつくろうと言ってくれたカンテレはすごい!

渡辺 すごいんですよ。びっくりしましたね。私は普段メディアに出るのが苦手で、取材もなるべく受けたくないタイプ。ですが、今回は実在する事件から着想を得ていることもあり、自分の言葉で話す場所をつくっておかないといろいろなところに被害がおよぶ恐れがあると思いインタビューを受けました。それぐらい難しい題材なので、覚悟して臨んでいます。

2022.10.24(月)
文=綿貫大介