村上健志さん、岡室美奈子さんが選ぶ坂元裕二ドラマの心を揺さぶる名シーン。
通好みのシーンも多いので、観返す際の参考にどうぞ。
坂元裕二さんとは…
1967年、大阪府生まれの脚本家・劇作家。19歳のとき、初めて書いた脚本でフジテレビヤングシナリオ大賞を受賞しデビュー。23歳で社会現象となった「東京ラブストーリー」を手掛け、今日まで数々の名作を世に送り出している。
「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」
「九月三日。
十二時五十二分。
スーパーたけだ屋。
蒸しパン、百六十円。
牛乳、小、百二十円。
一口羊羹、八十円。
時間的にお昼ごはんでしょうか。
蒸しパンと牛乳と一口羊羹」
───「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」7話
2011年の東日本大震災を機に始まる本作の第二部。注目は、大好きだった福島県に住む祖父が震災で亡くなって以降やさぐれてしまった練に、音が祖父のパジャマのポケットに入っていたレシートを読み上げるシーン。
音はレシートに記載されている品名を読むことで、おじいちゃんは怒ったり憎んだりしていただけではなく、毎日ちゃんと生活してたんじゃないかと伝え、練の気持ちを優しくほぐす。
「レシートを読み上げるだけで人を深く感動させる、坂元脚本の素晴らしさが炸裂したシーンです」(岡室さん)
「音ちゃんみたいな人が日本のどこかにいたら頑張ってほしいなと思う。音は毎日に潜む小さな幸せを発見するのが上手なんですよね」(村上さん)
「大豆田とわ子と三人の元夫」
「人生に失敗はあったって、
失敗した人生なんてないと思います」
───「大豆田とわ子と三人の元夫」5話
仕事で知り合ったイベント会社の社長・門谷と、“バツ3”同士という境遇で意気投合する大豆田とわ子。
しかしこの門谷は、突然とわ子にプロポーズしたかと思えば、離婚歴のあるとわ子に、自分のことは棚に上げながら「人生に失敗している。僕はそんな傷を丸ごと受け止めてあげようと思ってるんです」と言い放つ。
それに対してとわ子が言い返すのが「失敗した人生なんてない」というセリフ。
「男性の離婚は『勲章』になるが、女性の離婚は『傷』になるという歪んだ偏見を受け流さず、毅然として正しいことを言うとわ子に思わず拍手を送りました」(岡室さん)
2021.09.25(土)
Text=Daisuke Watanuki
Illustrations=Sayako Yamashita