2023年9月1日(金)、「東京芸術祭 2023」が開幕した。これは、東京の多様な芸術文化を通して、世界とつながる国際舞台芸術祭。国内外の作品と出会える場でもあり、ライブパフォーマンスで人間の想像力の豊かさ、自由さに触れるフェスティバルでもある(10月29日[日]まで開催)。
この記事では、同芸術祭で注目作を上演する気鋭の二人、古典の魅力を現代にアップデートする木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)と、さまざまなポップカルチャーを独自の色で再構築し、新たな世界を立ち上げる三浦直之(劇団ロロ主宰)をフィーチャー。「読むこと」が作品のインスピレーションにもつながっているという読書家二人に「お互いにオススメしたい本」を聞いた。熱いレコメンドを語るコメントからは、彼らの創作活動の一端も見えてくるようだ。
思いがけず意気投合、その共通点は?
歌舞伎作品を現代のアーティストと共に更新する木ノ下歌舞伎が、今回芸術祭で上演するのは『勧進帳』。細長く真っ白い舞台を一本道である"境界/ボーダーライン"に見立て、そこに人々の立場や思いが揺れ動くさまを繊細に浮かび上がらせる作品は、フランス・パリでも上演された劇団の代表作のひとつだ。
対して、古今東西のポップカルチャーをサンプリングするロロが書き下ろす新作『オムニバス・ストーリーズ・プロジェクト(カタログ版)』は、ロロ初のオムニバスストーリー。こちらは総勢100人以上の登場人物(出演俳優はたった6人!)による、さまざまな人生の断片を見せていく壮大な舞台となりそう。
いずれも池袋のランドマークである東京芸術劇場で上演とあって、二人に池袋でお気に入りの場所を聞くと、偶然にも揃って「ジュンク堂書店 池袋本店」を挙げた。
「大学受験のために泊まったのが池袋で、『このビル丸ごとが本屋!?』とびっくりしながらも興奮しました。今でも散歩コースとして日常的に通う、大好きな場所です」(三浦)「僕も地方出身者だから三浦くんの驚きはすごく共感します。池袋に行くと必ず寄りますし、1階の新刊コーナーと3階の文芸コーナーが絶対にのぞくお決まりのコース」(木ノ下)と意気投合し、自然と話題は最近読んだ本の話題に。
そこで木ノ下が「お互いのオススメ本を紹介してみよう」と提案、独自の視点と切り口で、とっておきの3冊を推薦し合うことに。
2023.09.14(木)
文=川添史子
撮影=増永彩子
編集=船寄洋之