子どもの心を大切に懸命に舞台に立ち続ける

 團子さんは、今回の撮影でもカメラの前に立つと、瞬時に華やかなオーラを放った。役者としても著しい成長を遂げているが、『傾城反魂香』でも、これまでにない感覚を味わったらしい。

「今まで出演させていただいた作品で一番、役の気持ちで居続けることが難しかったです。僕が演じた修理之助は、一度舞台に出ると40分間出続けなのですが、例えば20分出て引っ込むのが3回ある方が、舞台に立っている合計時間が長くても、引っ込むことができるので気持ちを集中して保ちやすいんです。舞台上で40分間、ずっとその役の気持ちでいるのは難しくて、どうしても雑念が湧いてきてしまいます。これまであまり出続けのお役をさせていただいたことはなかったので、新たな発見でした。

 目の前で師匠と兄弟子夫婦が話されているときに心のリアクションをし続けるのは難しかったけれど、絶対にお役の気持ちでしっかり反応したいという思いがあったので、なんとかくらいつくようにしていました」と、修理之助を演じていたときの心境を一生懸命に語ってくれた。

 そして團子さんにとっての次なる“初役”は三大義太夫狂言の一つ『義経千本桜』の「道行初音旅」の佐藤忠信実は源九郎狐。その扮装写真のために一足早く化粧に取り組んだ際のお話も伺った。

「忠信の化粧は初めてだったのでじいじのお弟子さん(市川)猿紫さんに細かい指導をしていただきました。じいじの忠信の舞台写真などを参考にしますが、顔が違えば見え方が違ってきます。なので、忠信の化粧と眉や目の化粧が似ている『傾城反魂香』の狩野雅楽之助を演じたときの写真も参考にしました」

 歌舞伎ならではの化粧は全く別の人物に変身できるが、どの時点で役のスイッチが入るのだろう。

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市川團子(いちかわ・だんこ)

2004年、東京都出身。父は9代目市川中車、祖父は2代目市川猿翁。12年6月、新橋演舞場でスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』のワカタケル役で5代目市川團子を名乗り、初舞台。13年10月、国立劇場『春興鏡獅子』の胡蝶の精で、国立劇場賞特別賞を受賞。

市川猿翁監修 三代猿之助四十八撰の内
『義経千本桜』忠信篇

立飛グループ創立100周年記念事業として行われる「立川立飛歌舞伎特別公演」では、三大義太夫狂言の一つ『義経千本桜』が上演される。序幕「伏見稲荷鳥居前」、二幕目「道行初音旅」、大詰「川連法眼館」はそれぞれ配役を変え、佐藤忠信実は源九郎狐を中村鷹之資、市川團子、市川青虎、静御前を市川笑也、中村壱太郎が演じる。

10月25日〜28日 13時開演 立川ステージガーデンにて

チケットホン松竹 0570-000-489
チケットぴあ 
https://w.pia.jp/t/tachihi-kabuki/

衣装クレジット

セットアップジャケット 129,000円、シャツ 45,200円、セットアップパンツ 65,000円/ビブリオテーク シューズ/スタイリスト私物

2023.09.07(木)
Text=Shion Yamashita
Photographs=Yuki Kumagai
Styling=Satoshi Takano
Hair & Make-up=Yoko Fuseya
Backdrops=Backgrounds factory

CREA 2023年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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永久保存版 偏愛の京都

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