皆さんの期待にも応えられるはず
この物語自体が、とにかく普遍的だと感じました。裁判の手順や景色が克明に、緻密に描かれているところが、やはり名作と言われる所以のひとつじゃないかと思います。台本を読んでいる中で、原作のいいところは残しながらも、今の現代の物語として新たに描かれていたんです。裁判員制度も少年法の年齢も変わりましたし、そうした法曹界の変化も含めてしっかりと準備して脚本を書いてくださっていて。その想いをひしひしと感じました。
だから僕も臨むにあたり、一般的に思い描く裁判官や弁護士の印象というものをいったん外して、どうやったら“自分の裁判官や弁護士”というものを、自分の腑に落ちた感じでその空間にいられるんだろう、と考えて演じていました。
――椎名さんは優秀だった元裁判官の弁護士という役どころですよね。かなり準備をされたんですか?
はい。弁護士や裁判官という職業は、こうした作品では見ることはあっても普段あまり接することがない職業ですよね。だから実際の裁判官や弁護士の方にお会いして、お話を聞いたり、法廷に行って裁判の雰囲気を見て感じ取ったりしました。そうしたことで、自分が所在無げにいるわけじゃなくて、きちんと所在を持って自分の弁護士の席にいるな、という感じになったかと思います。
――1978年に映画化された『事件』も、資料としてご覧になったんでしょうか? 役のヒントになりましたか?
撮影に入るちょっと前に、「映画はどんな感じだったのかな」と思って観ました。だけど自分のほうを固めずに観てしまうと、映画のほうに何となくイメージが傾いてしまうかもしれないと思ったので、しっかり『事件』(WOWOW版)を考えてから観ました。皆さんの演技はやはり印象に残りました。
――最後に、放送を楽しみにしているCREA WEB読者に、ぜひ椎名さんからメッセージをお願いします。
僕は撮影している間、本物と寸分変わらぬ法廷にいられる、そこで芝居ができている本物の空間を味わった気がしていました。それは美術さんやスタッフさんが懸命にこだわって作ってくれた賜物なわけで、だからこそ僕らもその想いに応えたいと思って演じました。作品ではめくるめく、うごめく人間関係を楽しみに観ていただきたいですし、皆さんの期待にも応えられるはずだと思っております。
なので……まずは皆さんにしっかり1話を見ていただいて、その後は絶対に2話も見てください(笑)! 実は2話から裁判が始まるんです。そのまま全4話まで、どうぞご覧になってください。
椎名桔平(しいな・きっぺい)
1964年7月14日生まれ。三重県出身。1993年の映画『ヌードの夜』で本格的デビュー。最新出演作に映画『仕掛人・藤枝梅安』第二作(2023年4月7日[金]公開)など。
WOWOW「連続ドラマW 事件」
2023年8月13日(日)午後10:00より放送・配信開始
第1話無料放送【WOWOWプライム】【WOWOW4K】
無料トライアル実施中【WOWOWオンデマンド】
出演:椎名桔平ほか
原作:⼤岡昇平『事件』(創元推理⽂庫刊)
監督:水田成英
脚本:三田俊之 保木本真也
⾳楽:横⼭克
企画・プロデュース:⼤木綾子
プロデューサー:⼤原康明 ⼤瀬花恵
制作協⼒:FCC
製作著作:WOWOW
https://www.wowow.co.jp/drama/original/jiken/
2023.08.12(土)
文=赤山恭子
撮影=釜谷洋史
ヘアメイク=石田絵里子
スタイリスト=中川原寛(CaNN)