「日常を自由に過ごすことが表現者としての自由にも繋がる」

 極悪非道の漢から清潔感あふれる善良な男まで、どんな役でもこなし、自分色に染め上げる俳優・椎名桔平さん。

 最新主演作はWOWOWがおくる『連続ドラマW 事件』。主人公、弁護士・菊地大三郎を演じた。第31回日本推理作家協会賞を受賞した同名原作を基に、1978年に映画化、1993年にドラマ化された『事件』。このたび30年ぶりの映像化となったわけだが、重厚感はそのままに、昭和から令和へという時代のうつろいも丁寧に描写され、また新たな物語として誕生する。

 あらゆる作品からオファーが絶えない椎名さんだが、その素顔はと言うと、やわらかいトーンの関西弁で茶目っけあふれるトークを繰り出す、何ともチャーミングな一面も。

 固定概念に縛られず、プライベートも生き生きと充実した日々を送る椎名さんに、いつまでも錆びつかず健やかに過ごす秘訣を聞いた。

――椎名さんはInstagramに日々の出来事をちょくちょくアップしていますよね。楽しんでSNSに向き合っていらっしゃる感じですか?

 そうですね。思いついたときにくだらないものでも、ちょっとでも「こう感じたな」という日々のもの、本当にわずかなひとコマみたいなものを載せています。庭に鳥が来ました、この鳥は何ていう鳥だろうね、とか(笑)。ちょっとスパゲティを作ってみました、見た目より美味しかったですよ、とかね。載せるものももうなくなってきたけど、続けるということも大事なのかなと思ってやっています。

――お料理については、コロナ禍を機に始められたとか?

 そうそう。かつて「男子厨房に入らず」という言葉がありましたが、実は僕もそういうタイプだったんです。ひとり暮らしの若いときは、コンビニに行って何か買って来ればいいわけだし、料理するということに対して抵抗がすごくあったんですよね。

――今とは全然違うマインドだったんですね。

 野菜を切るとか、スーパーに行くとか、何だか抵抗があってね。……と、昔はそんなことを平気で思っていた時期があったけど、今は全然違います。時代は変わったわけで、自分もアップデートしなきゃと思ったのもあり、スーパーにも行くようになりました。おいしいパスタやお米はどういうものかなと探してみたり、スパイスなんかもすごくいっぱいあるから……結構見ているのも楽しいじゃないですか(笑)。トリュフ塩が好きで、「これ、何にかけたらうまいかな」とワクワクしたりね。

 今お話したような一連のことは、料理を作ろうとしないとわからなかったことで。ルーティンを自分でやってひとつひとつ体験していくと、何も苦にならなくなってくるなと気づきました。

2023.08.12(土)
文=赤山恭子
撮影=釜谷洋史
ヘアメイク=石田絵里子
スタイリスト=中川原寛(CaNN)