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自分のイメージとは関係なく、いろんな役に挑戦したい

――役としての感情の流れを大事に演じられている真彩さんですから、ここはもっと出したいけど……という葛藤もあったのかと。

 やりたいけど、求められているのはそこではない、というという葛藤はありました。ただそれが宝塚の美学であり、私自身、その世界観が大好きなので、不満があったわけではないんです。ただ自分の中で生きる役の子が、もっとやりようがあるんじゃないかと問いかけてくることが多かった気がします。

――『ジキル&ハイド』のルーシーが素晴らしかったです。過酷な人生を背負いながらも、彼女が根底に持っている純粋さが垣間見えて。宝塚時代のイメージとはかけ離れた役だったので、最初は驚いたのですが。

 役者として何でも演じられるべきだと思っていますから、自分のイメージとかは関係なく、いろんな役に挑戦したいと思っています。これまでいろんな役をやらせていてだいていて、どれも好きだし、演じていて楽しかったですけれど、ルーシーは毎日面白かったですね。歌に関しても、制限されることなく思い切り歌わせていただけて楽しかったです。

 今の年齢にしかできない役というのもありますから、その時その時を大切に。ここから歳を重ねながら、たくさん経験を積んでいつでもなんでも演じられる心の持ちようでありたいと思っています。

――心の持ちよう、と言うと?

 心を豊かに! ですね。役の幅は心を閉ざして、自分の価値観に固執してがんじがらめになっていては広がらないと思うんです。いろんなことを経験して、いろんなものを見て感じて、いろんな感情に出会って、演じていない時の自分の感情の幅をどんどん大きくしていって、仕事の時はビシッといただく役に毎回新鮮に向き合っていけたらと思っています。

2023.07.21(金)
文=CREA編集部
撮影=深野未季