永嶋 それが無料ですからね。

高橋 はい。そこに、文藝春秋から出ている、電子書籍で読めるキングのリストというのもついておりまして、全部で207ページだかあるんです。

永嶋 文庫とかで出したらお金取れるんじゃないかと思うんですけど(笑)。取っちゃいけない、とキング先生がおっしゃるんでね。というのが、現在の50周年記念企画第1弾ですね。

ネタバレできずに煩悶する

高橋 「ローリー」もすごくいいですよね。これがまた犬が出てくるよ、と。

永嶋 奥さんを亡くしてしまったおじさん、もうおじいさんに足を踏み入れかけている人に、昔から母親代わりのお姉さんがいて、毎晩電話をかけてくるような。そのお姉ちゃんが、犬くらい飼いなさいよ、と言って子犬を連れてくるというところから始まる。最初は持って帰ってくれよ、とか言うんですけど。

高橋 それがだんだん可愛くなっていって、という。すごくいい話。

永嶋 ……だと思っていたんですけどね。ギリギリのとこまで。

高橋 ギリギリのところで、なんでそうなるの!? という。

永嶋 最初読んでいたときは、キングがいい感じの人情ものを書いていて、途中で思いついちゃったのかなと思ったんですけど、ひょっとしてこっちが先にあったんじゃないかと思い始めていて。

高橋 ああ、逆に。

永嶋 そう、あるものが登場するわけなんですけど、もしかしてそっちが先なのかなと。

高橋 なるほど。

永嶋 そこにたどり着くというか、そこを経由するというか、「それ」が先にあったのではという疑惑を持ち始めています(笑)。

高橋 これ、見ていただくと、まあ仄めかしの域を超えて「それ」があしらってございますので。しかもこれもクレジットが奥のほうにあるので皆さんなかなかお気づきにならないかもしれませんけど、なんと藤田新策さんがわざわざそのために「それ」の絵をくださったという。無料のもののために(笑)。「それ」「それ」って、気になりすぎるだろこれ! しかもそのあとの『異能機関』試し読みのなかにも「それ」が出てくるんですけど。きっと、キングが近年別荘で住んでいるフロリダのあたりで、「それ」が非常に親しまれているんでしょうね。……まあ、なんだかわからないものの話を延々続けるのもなんなんですが。

2023.07.21(金)