役者として認められず悔しい思いも

――本作での演技は高く評価され、昨年の金馬奨と今年の香港電影金像奨にて、最優秀主演女優賞にノミネートされました。両方で候補になったのは、『消えゆく燈火』(東京国際映画祭にて上映)に主演した名優シルヴィア・チャンさんとアンジェラさんだけです。

 尊敬する先輩と、金馬奨でも金像奨でも同じ女優賞にノミネートされたことが信じられないです。何度も言いたいぐらい、とにかく嬉しかった(笑)。じつは、『星くずの片隅で』を撮った後に、上海でシルヴィアさんと映画で共演したんです。ただ、周りのスタッフさんからは“モデル出身の若手”という見られ方をしていて、「まだ自分は認められていないんだ」と、ちょっと悔しい思いをしていました。その後、女優賞の候補に選ばれたことで、少しずつ周囲の見る目も変わったような気がします。

――両授賞式でのエピソードも教えてください。

 金馬奨と金像奨の受賞式では、アンソニー・ウォンさんにご挨拶できましたし、金馬奨のパーティでは是枝裕和監督にご挨拶できました。金像奨では初めてアンディ・ラウさんにお会いしました! アンディさんは最優秀主演女優賞のプレゼンターだったので、発表前のスピーチで私の名前を壇上から呼んでくれたのですが、あまりの嬉しさに失神しそうになりました(笑)。そのときはサミー・チェンさんが受賞されたのですが、私がいちばん好きなアンディさんの映画がサミーさんと共演した『ダイエット・ラブ』なんです! 嬉しくて嬉しくて、舞台裏でサミーさんと一緒に写真を撮らせてもらったり、信じられない出来事の連続でした。

――日本の観客に、『星くずの片隅で』をどのように観てほしいと思いますか?

 香港や台湾では高く評価されましたが、庶民の生活を描いた地味な作品なので、正直な話、そこまで海外の観客の心を動かせるか、海外が大きな市場になるかは私には分かりません。でも、『万引き家族』のように今の日本社会を反映した是枝監督の作品は、香港でも多くの観客に受け入れられています。ですから、今の香港社会を反映している『星くずの片隅で』が、日本でも受け入れてもらえる可能性はあると思いますし、一人でも多くの方に共感してもらえたら嬉しいです。

2023.07.14(金)
文=くれい 響
写真=平松市聖