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好奇心に突き動かされてここまできた

 出来ることなら不労所得でいきたいです(笑)。好きなときに好きなことだけやるみたいな。でもおおよそ無理ですし、そもそも仕事ってある程度はつらい思いをしないとお金がもらえないものだとも思っています。そのうえで仕事のペースでいうと、「休んでみることもやってみなきゃ」とは思っています。1カ月とかまとまった期間休んだことがないから、やったらどうなるのかな? という興味はあります。

 ありがたいことにそれぞれジャンルがバラバラの作品のお話がいただけるようになってきたので、いまのところは飽きずにいっぱい色々なことができて楽しい! と思っています。

――あくまで行動原理は“興味”なのですね。

 20代前半の暇だった時期は、誰にも言われていないのに3日間寝なかったらどうなるのか? を試すタイプでした。そして3日目の朝にシャワーを浴びていたら天井と床のどっちがどっちかわからなくなり、「これはヤバいぞ」と思って寝ました(笑)。昔も今も「これをやったらどうなるんだろう?」という好奇心はずっとありますね。

 小さいときは「この滑り台から飛び降りてみたらどうなるんだろう」みたいに考えていて、いまも「この机が欲しいな」と思ったら、どうやって作っているのかを観察したり調べたりして「自分でも作れるんじゃないか、作ったらどうなるんだろう」と考えますし、料理をしていても「和風のものにコンソメを入れたらどうなるんだろう?」みたいに常に実験しています。そういう感じで、「休んでみたらどうなるんだろう」とか「これ断ったらどうなるんだろう」って(笑)。

――『THE やんごとなき雑談』の中では「手帳が予定で埋まっていると安心する」というような心情の吐露もありましたが、そことはまた変わってきた部分もあったり……。

 あのときはスケジュールが空っぽでしたから。そこも「埋まったらどうなるんだろう」みたいな感覚もありましたし。飽き性で好奇心が移り変わりがちだからこそ、常に新しい刺激を求めて色々なジャンルや役、様々な人と仕事をしているんだと思います。「自分がこうしたいから」とか「私はこれが求められているから」という思考になったら狭まっちゃって、僕みたいなタイプは退屈でしょうがなくなっちゃう。

――キャリアを積み重ねていくうえで「飽きない」工夫は重要ですよね。

 「同じことしてるな」と思うと仕事になっちゃうじゃないですか。もちろん仕事ですが、メンタルが楽しくないとやりたくないし、楽しんでいるからこそいい仕事ができるものだと思います。だからこそ、自分が楽しめるために色々なことに挑戦をしています。

 俳優って色々な人が憧れてくれる職業なのに、本人が飽きちゃっていたら残念ですよね。作品を観て「感動しました」と言ってくれている人がいるのに「自分は面白くないなと思いながらやっていたんだけどな」みたいになっちゃったらダサいと僕は思うから、全力で楽しみ抜きます。そういうことを照れ隠しで言う人はいますが、やっぱり楽しんでナンボだと思います。

――しかし、近作の役どころを見るとベートーヴェンに宮沢賢治に宇宙人と、改めてとんでもない幅の広さですね。安倍晴明に仮面ライダーもあって……。

 次はM78星雲(※ウルトラマンの故郷)に行くのか!? みたいなね(笑)。ありがたいことに向こう3年はなんとなくお話が決まっているので、色々と面白いことをやっていくつもりです。(前篇から読む

記事に載っていない「秘蔵ショット」あり! 中村倫也さんのフォトギャラリー

中村倫也(なかむら・ともや)

1986年12月24日生まれ。東京都出身。2005年俳優デビュー。近年では、ドラマ『石子と羽男-そんなコトで訴えます?』、『仮面ライダー BLACK SUN』などに出演。現在「ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪」(NHK Eテレ/ナレーション)が放送中。待機作にドラマ『ハヤブサ消防団』(2023年7月)などがある。

映画『宇宙人のあいつ』

2023年5月19日(金)全国ロードショー

出演:中村倫也 伊藤沙莉 日村勇紀(バナナマン) 柄本時生 関めぐみ
千野珠琴 細田善彦 平田貴之 山中聡 井上和香 設楽統 山里亮太
監督:飯塚健
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©映画「宇宙人のあいつ」製作委員会
https://happinet-phantom.com/uchujin/

衣装クレジット

プリントジャケット 48,000円、シャツ 53,000円、パンツ 48,000円全てyoshiokubo(yoshiokubo/03-3794-4037)

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2023.05.20(土)
文=SYO
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=Emiy(エミー)
スタイリスト=戸倉祥仁(holy.)