この記事の連載

 最新主演映画『宇宙人のあいつ』が公開されたばかりの中村倫也さんへのインタビュ―。後篇では、『呪術廻戦』に絡めた"出力"のアプローチや、仕事のペースについての独自の考えを教えていただいた。

記事に載っていない「秘蔵ショット」あり! 中村倫也さんのフォトギャラリー
前篇「中村倫也が自己を徹底分析してみたら。僕の考える「誠実」を話そう」を読む


――前篇からつづく本作の別の取材でお会いした際に、中村さんが高知ロケで食べた地元飯をメモしていたと知ってプロフェッショナルぶりに衝撃を受けました。その時点で後々の取材時に使えるエピソードを準備しておくんだ……! と。そういう意味で、中村さんが言う「誠実」の濃度は、レベルが違うなと思っています。

 この間も新作映画を撮っていましたが、クランクアップの日に監督に話を聞きに行きました。普段の自分は監督にあまり質問をしないけど、来たる宣伝のタイミングに向けて「そもそもなんでこの映画を作ろうと思ったんですか?」というのを聞いておかないといけないなと思って。

 取材のときって俳優ばっかり喋らされるじゃないですか(笑)。それは監督に聞いて下さいって思うことまで喋らないといけない場合もあるから、だったら前もってちゃんと聞いておこうと思って、話してもらったことをメモっておきました。僕も忘れっぽいから、そういったことは意識的にやるようにしています。

 最初にお話しした4つの中村倫也のうち、①の俳優としての行動に、宣伝を行うスポークスマンとしての立場も加わってきたという感覚です。

――なるほど、2つの中村倫也が同時に出てくることもあるし……。

 現場によってはそうですね。そして、4つの中村倫也を総括している引いた目線の中村倫也もいるんですよ。プロデューサー、ディレクター、カメラマン、出演者に脚本家……全部違う脳味噌で全く違う仕事がありますが、みんな大なり小なりやっていると思います。身近な例だと、話す相手によって微妙にアプローチって変わるものじゃないですか。その延長線上にあると思います。

――『宇宙人のあいつ』で中村さんが演じられた土星人は、ちょっと引いたところにいるポジションかと思います。日出男として家族との交流を楽しんでいるけど、内心「これでいいのか」という想いもあるし、嘘をついている罪悪感もあるでしょうし……。しかもそういったニュアンスを観客にわかるように“ニュアンスとして表出させる”魅せ方のテクニックもいるかと思うので、技巧派のキャラクターだと感じました。

  なるほど。全然考えてなかった(笑)。経験が蓄積されていくと、無意識が増えていいですよね。今日、SYOさんが五条悟っぽい格好をしてるから『呪術廻戦』で例えると、「呪力の出力をオートマでやる」みたいな話かもしれない(笑)。

――「いつでも新鮮な脳をお届けだ」ですね(笑)。中村さんは無下限呪術を出しっぱなしにしながら反転術式も回し続けているわけか……。つまり並列処理を自動で出来るようになったと。

 そういうことです(笑)。

2023.05.20(土)
文=SYO
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=Emiy(エミー)
スタイリスト=戸倉祥仁(holy.)