好きだからこそ「役者を辞めたい」とまで思った

――本作のオリジナルタイトル『A HARD DAY』にちなんで、最近「めっちゃきつかったな」と思った1日があれば、どんなスケジュールだったのか教えてください。

 毎日です(笑)!

――磯村さんは売れっ子なので!

 いえいえ! 最近で言うと、先ほどお話した雨のシーンは稀に見るベリーハードデイズでした。ただ、ハードを日常にしてしまうと心身ともに大変なので、なるべくハードデイズをイージーデイズにできるように努力しています。

――それは自分の心のスイッチを切り替える、みたいな意味ですか?

 そうですね。少し前までいろいろ作品が重なって、睡眠時間も全然取れなくて、自分の心がどんどん窮屈になっていったんです。「自分はもう役者をやめたほうがいいかもしれない」と思うくらいまでいってしまって。……好きなのに。好きだからこそ、みたいなことところがあったと思います。

 それを機に、これからも人生は長いし、ひとりの人間としてまずは考えて、ちゃんと見つめ直していったほうがいいと思うようになりました。人は機械じゃないので、まずは自分の心を守ってあげようと。例えば、旅に出たり、スケジュールを調整してもらうなど、やり方を変えていきました。

 働きすぎることは決していいことではないと思うので、きちんと選択しながら、ひとつずつを大切にしていこうという考えで、徐々に徐々に進めていきました。とはいっても、作品で手を抜いたことはないですが。

――考えて行動されてご自身でいい変化の流れを作られたんですね。ちなみに、最近の業界的「磯村フィーバー」はどう感じていますか?

 フィーバー!? 感じてないです(笑)!

――2023年上半期は特に毎月公開作が続いているので、ご自身でも感じているのではと勝手ながら思っていました。

2023.05.18(木)
文=赤山恭子
撮影=佐藤 亘