次なる目標は「武器」として秘めるのが磯村流

 あの……働いているふうに見せるのが僕はうまいんじゃないですか(笑)? おっしゃっていただいたように、『最後まで行く』もしかり、今年は出演作品の公開日が近くなっているんです。すべてをそんなきつきつで撮っていたわけではないので、僕も「あれ? こんなに上半期に入ってくる?」とびっくりしたぐらい。そう見えているだけなんです。

 「ドラマも出て映画も出ている!」と思うとすごく出ているように感じてもらえますけど、実際、今もドラマ1本だけを集中して撮っているので、全然フィーバーとかは感じていません。

――活動していく中で“磯村勇斗”の名前がどんどん知られていくところから、充足感は伴ってきますか?

 最初のデビューしたての頃と比べたら、やはり知っていただく人たちの人数は増えたなとは感じています。仕事の量もそうですけれど、求められる役柄の重さも、年々責任を感じることが多くなりました。が、「まだまだここじゃない、こうじゃないな」と思っているところがあるんです。毎日自分自身と戦っているというか、見つめていますね。

――たとえば山登りだと何合目まで来ているな、といった感覚はあるのでしょうか?

 わからないですね。頂上がそもそもどこなのかが、わからないので。頂点が見えない限り今何合目かを計算できないし、頂点がないから面白いんだと思うんです。頂点を探しているという感じで到達もしたいけど、おそらく一生できないと思います。

――いわゆる会社員だと年間計画や目標設定がありますよね。磯村さんの場合は俳優ということもありますが、少し先の未来の目標などは特に設定しない派でしょうか?

 はい。いろいろ柔軟に動きたいので計画しません。……というか、していても絶対言わないですね(笑)。大事なことは言わないんです、僕。本当にやりたいことは公にしたくないタイプなんですよね。今までもそうでしたし、そこだけはちゃんと隠して武器を持って、みたいな。親友にも言わないですし、着実に一歩ずつ、一歩ずつ、獲物を狙うかのように迫っていきます。

――これまで秘めて目標を達成した経験がある、ということですよね。

 そうですね。秘めながらやっていたのはあります。それがたぶん自分の活力になっていると思います。けど役者としては楽しく、まだまだいろいろな役には挑戦したいと思っています。毎日、毎年、とにかく挑戦していきたいですね。

磯村勇斗(いそむら・はやと)

1992年9月11日生まれ、静岡県出身。主な出演作は連続テレビ小説「ひよっこ」、ドラマ「恋する母たち」、「きのう何食べた?」、「青天を衝け」など。現在、ドラマ「ケイジとケンジ、時々ハンジ。」に出演中。また、待機作にドラマ「きのう何食べた?season2」(10月放送開始)、映画「波紋」(5月26日公開)、「渇水」(6月2日公開)、「正欲」(秋公開)がある。

映画『最後まで行く』

2023年5月19日(金)公開

出演 岡田准一 綾野 剛
広末涼子 磯村勇斗
駿河太郎 山中 崇 黒羽麻璃央 駒木根隆介 山田真歩 清水くるみ
杉本哲太/柄本 明

監督 藤井道人
脚本 平田研也 藤井道人
音楽 大間々昂
© 2023 映画「最後まで行く」製作委員会
https://saigomadeiku-movie.jp/

2023.05.18(木)
文=赤山恭子
撮影=佐藤 亘