俳優人生の中でもすさまじい、大変なシーンだった

 そうなんです(笑)。尾田はほぼほぼ死んでいたので、岡田さんにずっと(死体袋に入って)引っ張られていたり、くるんだりされていた感じでした(笑)。

――死体を運ぶことに関して、岡田さんと打合わせもされたんですか?

 しませんでした。岡田さんのやさしさは、くるまれていてもわかりました。岡田さんは死体を包むのも上手なんですよ!

――磯村さん、やや誤解を招く表現になりそうです(笑)。

 もしかしたら過去に何回か経験があったんじゃないか……と思うぐらい(笑)。それほどアクションがお上手ということなんですけど。とにかく僕にケガをさせないようにと、気を遣ってケアをすごくしてくださいました。例えば、頭のあたりが(瓦礫に当たって)危なかったら、岡田さんはしっかり頭を支えてくれたりもして。それでも芝居ではガサツにやっているように見せていたので、本当にすごいなと思いました。

――冒頭の岡田さんとの接触、車で轢かれるシーンは特にインパクトも強かったです。

 あのシーンの撮影は、1月の寒い時期の深夜に撮っていました。雨降らしがとにかくすごくて、おまけに雪まで降っていたので、実際かなり過酷な現場だったんです。 その状態が連日続いていたので、撮影が終わったら僕たちはすぐ車に入ってあったまっていました。岡田さんとはちょっとお話もしていましたけど、基本は寒いから、ふたりともとにかく体力が奪われないように静かにしていたい、みたいな状態で(笑)。

――この現場ならではのエピソードですね。

 そうですね。藤井組は過酷な現場ではあるんですけれど、やりがいもあるんです。そんな中でもあの雨のシーンは、俳優人生の中でもすさまじい、大変なシーンだったんじゃないかなと思います。

――ちなみに、死体を演じる際の極意はありますか?

 死体の極意は……時間経過を考えるところ、ですね。死んだ直後から時間が経つと、身体の硬さが変わっていくんですよ。死後硬直がとけてやわらかくなる瞬間とかは、考えてやっていました。全然映っていないんですけどね(笑)。

 映像ではわからなくても、「ここのシーンでは交通事故で吹っ飛ばされてから何時間経っているから、そろそろ指がやわらかくなっているよね」と話しながらお芝居をしていました。そういう細かいところ、好きなんです。

2023.05.18(木)
文=赤山恭子
撮影=佐藤 亘