藤井組は「コロシアムみたいな現場」

―― 一方、綾野さんとは共演回数も重ねていらっしゃいます。

 ドラマも含めて今回で4回目になりました。剛さんの演じる矢崎に関しては、完成した映画を観て「こんなにサイコパスな人だったんだ……めっちゃこの人、怖いじゃん……」と改めて思いました。

 尾田は矢崎と部分的に会う役柄で、今回は対峙するシーンがあったんです。そのときも本当に狂ったように僕のほうに迫ってくるんです……。テストのとき、急に剛さんが雄叫びをあげていたんですよね。そのまま追いかけてきたから、「ああ、やばいなこの人、本気で逃げないと……!」とすごく追い詰められました。いろいろ実験してくださるので、剛さんとやらせていただくのは本当に面白いです。

――いい緊張感も生まれそうですね。

 そうですね。緊張感がありながらもお芝居を楽しむ、みたいな感じがあって。非常にぞくぞくしながらやっていました。

――作品に関して、ふたりでお話もされたんですか?

 しました。イン前からお互いの出演を知っていたので、「楽しみだね」というところから始まって。あとは……ネタバレになるからなかなか言いづらいんですけど、対峙のシーンではどうやったらふたりの関係性が出るのか、どう詰めていったらいいのか、みたいなことも監督を交えて3人で話したりもしました。

――そうやってクリエイティブな話をすることは、磯村さんにとってどんな時間ですか?

 作品づくりにおいてはとても重要だと思っています。そうしてコミュニケーションをとっていく中で新しい発見があったり、お互いの信頼関係につながってくる部分だと思うので、どんどん話していくべきだなとは思っています。

――改めて、藤井組の魅力もお伺いしたいです。

 すごくエキサイティングな現場なので、やっているときは体力も集中力もすごく必要です。だからこそ、どの現場よりも終わった後に達成感があります。できあがりを観ても、戦った分、それ以上のクオリティで最後に監督が完成させているので、そこを楽しみにやっています。また、藤井さんは役者やスタッフさんひとりひとりに対して、本当にやさしくて丁寧なんです。親身に寄り添って演出してくださるので、役者としてもお芝居をするのが楽しくなっていくし、もっと追求したいと思わせてくれる現場だと感じています。

――自分を試してもらっている感もあるんでしょうか?

 そうですね。自分の今できる、持っているすべてを出せる場でもあるし、引き出してくれる場でもある気がします。何て言うんですかね……ギリシャのコロシアムみたいな感じです、藤井組は!

2023.05.18(木)
文=赤山恭子
撮影=佐藤 亘