呉 そうですね。面白いものを書いて、読者に面白く読んでほしい。作家にとってそれしかないと言っても過言ではないですからね。

◆会場からの質問タイム

呉 さあ、ここからは今日会場にいらしているみなさんからの質問にお答えしていきましょう。

 呉さんにお尋ねします。自分と主人公の年代や性別が違う時にどうやって主人公の気持ちを思い浮かべますか。

呉 これは難しくてですね、僕はもう半分以上あきらめていますね。というのも、女性の登場人物を出して、これが女性の気持ちなんだ、と書くことはできないし、それをやれてると思っている自分が怖すぎて。ヘンに勘違いして「わかってる」と思って書くことが怖いんです。なので、自分より二十歳くらい上の世代を主人公にした『おれたちの歌をうたえ』は挑戦でしたね。書く時には「この登場人物は」というエクスキューズを必ずつけます。「この登場人物はこういう考え方をする」と考えることで、自分を納得させますね。

 有栖川先生、先生は霊感が強いのでしょうか。

呉 はまけんざぶろうシリーズの読者の方かな。

有栖川 霊感はまったくないです。幽霊はいないというのが現実認識のベースにあります。死んだ人は生き返らない。そういう世界だから探偵や推理小説が必要なのかなと思います。もしも幽霊がいたら、という発想で怪談も書いていますが、それは、人間は幽霊がいるって考えたくなったりするよね、ということです。

 呉さんに質問です。『爆弾』というシンプルなタイトルにした意図は? ほかにタイトル候補はありましたか。

呉 いろいろありました。でもぜんぶダメでしたね。一つ、これでいきたいというのがあったんですが、四方八方から止められました。

有栖川 後学のためにぜひうかがいたいですね。

呉 永遠に封印したので、公表できません(笑)。ある編集さんからは「そのタイトルで売れたら自分の編集人生の否定だ」とまで言われました。タイトルはいつも悩みますね。『スワン』もずっと仮タイトルで、それが結局タイトルになりました。

2023.05.05(金)