有栖川 タイトルを決めないまま書くんですか?

呉 仮タイトルはつけるので、だいたい仮タイトルがそのままタイトルになります。『爆弾』もそうです。そういう意味では完成してから決めることは滅多になくて、『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』だけですね。あれだけは最後になんとかひねり出しました。

 お二人にお尋ねします。海外に旅行して印象的だったところはありますか。

呉 海外旅行、行ったことないんです。唯一子供の頃、韓国に親が連れて行ってくれたらしいんですが、三歳くらいだったので覚えてません。

有栖川 興味ない?

呉 ものぐさなんです。パスポートを取るのが面倒くさくて、持ってません。

有栖川 私は、印象的だったのは、二〇一九年の七月の旅ですね。ロシアに行ったんです。サンクトペテルブルグとモスクワに行っただけですけど。ドイツ製の新幹線に乗る時、荷物検査があってものものしい雰囲気でしたね。この国はテロを恐れ、戦っているんだなと肌で感じました。それで……。

呉 有栖川さん、もう時間です。そんな面白い話、残り二分のタイミングでしちゃダメですよ!

構成:タカザワケンジ
写真提供:大阪市


■プロフィール

呉勝浩(ご・かつひろ)
1981年、青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。2015年『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。18年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞受賞。20年『スワン』で第41回吉川英治文学新人賞、第73回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)受賞、第162回直木賞候補。21年『おれたちの歌をうたえ』で第165回直木賞候補。22年『爆弾』で『このミステリーがすごい! 2023年版』、『ミステリが読みたい! 2023年版』ともに第1位獲得。

有栖川有栖(ありすがわ・ありす)
1959年、大阪市生まれ。同志社大学法学部卒業。89年『月光ゲーム』でデビュー。2003年『マレー鉄道の謎』で第56回日本推理作家協会賞、08年『女王国の城』で第8回本格ミステリ大賞小説部門、18年「火村英生シリーズ」で第3回吉川英治文庫賞を受賞。本格ミステリ作家クラブ初代会長。臨床犯罪学者・火村英生と推理作家・有栖川有栖コンビが活躍する「火村英生シリーズ」は根強い人気を誇り、最新長篇『捜査線上の夕映え』は『このミステリーがすごい! 2023年版』第3位。23年、これまでの功績により、第26回日本ミステリー文学大賞受賞。

2023.05.05(金)