こだわりを持ちつづけていることのひとつが“色”
――“EDWIN FOR MARGARET HOWELL”のジーンズの独特な色味にもこだわりを感じます。
そのシーズンのコレクションに寄り添った色をジーンズで表現しています。マーガレット・ハウエルからの「こんな感じにしたい」というイメージをまず理解するところからスタートします。ジーンズの青の中でも、赤味、青味、グリーン味、グレー味と色の表現の幅は無限大。一般的なジーンズは縦糸が青で、横糸が生成りなのですがマーガレット・ハウエルの場合は横糸を染めることもある。
ほかにも水洗いをして、温度、水の量、時間を変えて、一番いい頃合いを試行錯誤してターゲットの色味に近づけていくんです。同じ生地でも洗いの違いで、色の差があり、いわゆるひとつの洗い名でも10パターンくらいの洗い条件の違いがあり、ジーンズというファブリックの青の可能性を広げる作業をします。
“青”の中で違いを作っていくのは、実はとても難しい作業です。同時に理想のジーンズの表情を表現するのは我々のものづくりの醍醐味を感じる部分でもあります。
――色の表現において特に思い出深いコレクションはありますか?
2010SSシーズンに誕生した「グレイキャスト」のシリーズです。まず、パッと見がいわゆる青ではなくグレー味を帯びています。とても独特な色味で、他のブランドさんではほぼお目にかかったことがありません。“EDWIN FOR MARGARET HOWELL”のアイコニックな色目だと思っています。
マーガレット・ハウエルの絶妙な色のイメージを表現するために、我々は生地だけでなく糸づくりからこだわって作っています。横糸は節のある特殊な糸を使用することで、不均一でナチュラルな独特の表情に。実はこれ、糸を刻んだものを、糸をよる時に混ぜて入れています。こんな手の込んだ技法はおそらく世界中を探しても“EDWIN FOR MARGARET HOWELL”でしか使用していないんじゃないかな。
2023.04.28(金)
文=天野真由美