この記事の連載

 Twitter発のタワマン文学を小説化した『息が詰まるようなこの場所で』。作者の外山薫さんは、もともと10万人近いフォロワーを抱える「窓際三等兵」というアカウント名で発信していました。なぜ知名度の高いアカウントを"捨てた"のでしょうか。外山薫と窓際三等兵の気になる関係についてもお聞きしました。

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──外山さんはもともと作家を目指していたのですか?

外山薫さん(以下、外山) 文章を書くのは昔から好きでしたけど、作家を目指していたわけではありません。学生時代は「作家になりたい」とふんわり夢みたいなことを考えたこともあったんですけど、結局一作品も書き上げたことはなかったですし……。

 結局、文章を書くのが好きなだけで、ストーリーをつくる才能はないと自分で諦めていたんですよね。だから今回書籍化のお話をいただいた時も「これで作家になれる」というよりは、「夢のリベンジ」という感じで「人生の記念に一冊本が出せたらいいな」くらいのつもりでした。

──外山さんは会社員だと伺いました。平日お仕事をされながらのご執筆は大変ではなかったですか?

外山 大変さよりも楽しい気持ちのほうが強かったですね。平日、子どもを寝かしつけてからだいたい1〜2時間執筆に充てていたんですけど、1日に原稿用紙2〜3枚のペースで書いていたので、とくに日常生活への支障もありませんでした。

 子どもを風呂に入れている時や通勤時間にプロットを具体的に膨らましていく作業も面白かったですし、ストレスもなかったですね……。ただ、小説を書いていることは家族には内緒にしていたので、妻からは「夜になるとコソコソ何かしている」と冷たい目を向けられていました(笑)。

2023.04.22(土)
文=相澤洋美