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 タワーマンション(タワマン)に住む人々の赤裸々な日常をTwitterで描いた「タワマン文学」の第一人者、「窓際三等兵」さんが、「外山薫」名義で作家デビュー。湾岸のタワマンを舞台に、共働きの銀行員夫婦の子育てや中学受験、高層階に住む富裕層との生活格差などを描いた小説『息が詰まるようなこの場所で』を上梓しました。作品誕生までの経緯や、作品に込めた思いなどをお聞きしました。

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──外山さんはもともと、「窓際三等兵」というアカウント名で、タワマンを舞台にした都会の格差や嫉妬心を描いた「タワマン文学」を発表されていました。Twitterでタワマン文学を書くようになったきっかけは何だったのでしょうか?

外山 薫さん(以下、外山) あらためて聞かれると答えにくいんですが、正直、暇つぶしだったんです……。新型コロナウイルスのパンデミックで、家から出られなくなった時がありましたよね。あの時に、あまりにすることがなかったので、Twitter投稿でもしてみようかと始めました。

──いきなり小説を投稿し始めたのですか?

外山 いえ、まさか(笑)! 最初は個人的に興味があった「受験」や「不動産」や「金融」クラスタ(同一の話題をリツイートしあうようなユーザー)での交流目的で始めたんです。それまでもTwitterのアカウントは持っていたのですが、投稿などはせずに見る専門の「ROM専」だったので、せっかくだからゼロから人格をつくってみようとアカウントを開設して投稿を始めました。

──交流目的だったアカウントでなぜ小説を?

外山 2021年の夏頃、交流していた不動産クラスタの間で「タワマン高層階で炊いた米は(気圧が低いから)美味しく炊けない」みたいなひがみツイートがバズったことがあったんです。その投稿をネタに、「全宅ツイのグル」というアカウントの方が、タワマンに住む世帯年収1,500万円の裏事情みたいなネタを投稿し始めたのを見て、面白そうだったので僕もまねして始めました。

2023.04.22(土)
文=相澤洋美