デビュー4年で初主演。座長経験を経てあらためて感じた「どんな役でも作品の一端を担っている」ということ
多くの人が経験する、高校の卒業式。胸に抱く思いは千差万別だ。学校からは卒業しても、自分の気持ちは何から卒業するのか、しないのか、はたまたできないのか――。そういえば私はどうだったろうと、そんな甘酸っぱい思いを馳せる映画が届いた。
『少女は卒業しない』は、高校の卒業式までの2日間を描く、高校生たちの恋や青春との「さようなら」の物語。『桐島、部活やめるってよ』や『何者』などで知られる朝井リョウの同名短編小説を映画化した。
主演を務めたのは、河合優実。河合さんといえば、『サマーフィルムにのって』の天文部でSF好きのビート板役、『PLAN 75』で倍賞千恵子演じる角谷ミチと、コールセンターの業務で向き合う成宮瑤子役など、記憶に残る鮮明な演技で今、映画界から注目されている逸材だ。
本作で映画初主演を飾った河合さんは、彼氏へのどうしても伝えられないある想いを抱えながら、卒業生代表の答辞を担当する料理部部長の主人公・山城まなみを演じた。
初主演映画への思いや、自身の卒業式の思い出まで、河合さんの素顔に迫った。
「一緒につくろう」が感じられる現場は楽しい
――『少女は卒業しない』で初主演を飾りました、おめでとうございます。作品のどこに惹かれて出演を決めたんでしょうか?
ありがとうございます。まず、これだけ映像化されている朝井さんの小説が原作で、主演でお話をいただいたということが大きかったです。「ほんとですか……?」みたいな感じでした。あと、もうひとつビビッときたのが、中川(駿)さんが監督だったことです。中川さんのひとつ前の作品を映画館に観に行っていたので、「あ! あの中川さんなんだ!」と思って。ご一緒できることも大きな理由のひとつでした。
『少女は卒業しない』は私を含めて共演の皆さんも若いですし、誰かの懐を借りるのではなく、若い力でチャレンジする・みんなでつくっていけるような雰囲気のある企画でした。そこもすごくうれしくて、やってみたいと感じました。
――河合さんは、山城まなみを演じました。ある思いを抱えている、複雑な役どころでしたよね。
この作品にはいろいろな高校生が出ていて、それぞれの気持ちがわかる感じだったんです。けど、唯一まなみだけが自分にはない経験をしている子なので、共感が難しくて……。そこは原作を読み、監督に聞いた話も重ねていき、演じていきました。
――中川監督は、河合さんの佇まいや演技に影響を受けたそうですね。お互いに刺激を受け合う関係性だったんでしょうか?
そうだと思います。中川さんは、みんなに対して「台詞の言い回しも変えていいし、一緒につくっていこう」というスタンスを示してくださっていました。きっとそれぞれ(の役者)でお互いに影響し合っている部分はあると思います。
映画は人とつくっているものなので、トップダウンで「君たちは全員コマだ」みたいな監督は基本いないというか、少なくなってきていると思うんです。けど、やっぱり中川さんのような若い監督だったり、しっかりと言葉にして伝えてくれる監督のほうが、「一緒につくろう」とまざまざと感じられる現場でやっていきやすい気がします。
――ちなみに、群像劇でしたが特に好きなエピソードはありますか?
みんなそれぞれいいなあ~、と思います。挙げるなら、特にバスケ部のふたりが結構好きかもしれないです。恋人同士のふたりもいいんですけど、友達の女の子同士の感じがすごい良かったな~と思って。
――とってもリアルですよね。
そうなんです。それぞれのキャストの空気が全然違って、それぞれのリアリティみたいなものがあるから、観ていてすごく面白かったです。
2023.02.22(水)
Text=Kyoko Akayama
Photographs=Miki Fukano
Hair & make-up=Aya Murakami
Styling=Tatsuya Yoshida