河合優実、デビューから駆け抜けた足跡を辿る

 「所在なさ、が自分のなかにあるなと最近思っていて。どこにも属していない感じ。これから先もきっと」

 自身の性格についての質問に、俳優の河合優実さんはこう答えた。

 高校卒業を控えた2019年2月にデビューして以降、今日に至るまでの3年間で河合さんは『アンダードッグ』『佐々木、イン、マイマイン』『サマーフィルムに乗って』『由宇子の天秤』『愛なのに』など、10作品以上の映画に出演。第43回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第95回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞、第64回ブルーリボン賞新人賞、第35回高崎映画祭最優秀新人俳優賞、2021年度全国映連賞女優賞を受賞し今年もすでに4本の出演作の公開が控える、今最も注目される若手俳優のひとりだ。

 そんな彼女がキャリアの節目に出演するのは松尾スズキ作・演出の舞台「ドライブイン カリフォルニア」。

 舞台稽古が始まる直前のある日、河合さんにお話を伺った。テーマは「自分自身との対話」。

 「日頃からふとしたときに自問自答を繰り返してしまう」と語る彼女が、芝居のこと、自分自身のこと、この世界に入った転機についてゆっくりと言葉を紡いだ。

ようやく「この先も行っていいんだ」と思った

――デビュー当初から注目俳優として駆け抜けた3年間だったと思います。振り返ってみて、どうですか。

 丸3年が経ち、やっとスタートラインに立った感じがしています。すごく早かったので振り返る間もなかったんですけれど、ようやく区切りがついた気がしていて。

 1年目はとにかく目の前にある仕事に集中していたので、正直いま振り返ってもいつ映画を撮っていたのか、何をインタビューで話していたのか、記憶が曖昧なくらい。それくらいめまぐるしく動いていました。

 2年目と3年目は、なんだか「急な坂を登った」という感じ。3年間で撮ってきた作品が次々と公開されて人の目に触れて、賞をいただく機会もありました。

 4年目の今になってようやく、「よし。ちゃんと覚悟を決めて、この先も行っていいんだ」と自分自身と向き合うことができた気がします。

――今回出演する松尾スズキさんの「ドライブイン カリフォルニア」は、河合さんにとって3回目の舞台出演です。様々な映像作品に出演してきたなかで約2年ぶりのステージとなるわけですが、どんな感覚ですか?

 まさに「立ち戻った」という感覚です。私がこの仕事を始めたきっかけがダンスなので、そもそものルーツが舞台の上なんです。自分の中でひとつの区切りを実感していたこのタイミングで、舞台に立つ機会をいただいたのは面白い巡り合わせだなあと思いました。

 「自分たちで一から創ったものを人に見せるのは楽しいな」という思いからお芝居にじわじわと興味を持ったので、自分の成長を確かめるよりも、純粋に「楽しいな」と思っていた感覚をもう1回味わいたいなと思っています。

――松尾スズキさんの舞台は「フリムンシスターズ」以来の2回目ですね。

 前回は「松尾さんのミュージカルに出られるんだ!」という喜びがとにかく大きくて。その喜びに終始していた部分が少しあったので(笑)、今回もお声がけいただいたことが予想外でした。また出演できるということだけで、もう嬉しさが……。

2022.05.24(火)
文=CREA編集部
撮影=佐藤亘
ヘアメイク=上川タカエ(mod’s hair)
スタイリスト=吉田達哉 ※吉はつちよし