シンプルで力強い味わいのケーキ

 余分な飾りのないシンプルな見た目の、味わいにこだわるケーキをご紹介しましょう。

 金と黒という意味の「ドレノア」は、ゲランド塩を加えたキャラメルの上に砂糖をギリギリまで焦がしたキャラメル、その上にさらに生クリームと合わせたキャラメルのクリームをのせ、全体をチョコムースで包んでいます。異なる風味のキャラメルが次々に口の中に広がります。

 「レブロン」に使っているのは、オレンジ果汁で香り付けした有機ルイボスティー。それを7日かけて抽出してクリームと合わせ、小麦粉を使わないチョコのビスキュイの上にのせて、さらにその上にチョコクリームを重ね、仕上げにもチョコを吹き付け。NBAの選手の名を冠したのは、いかり肩の姿のイメージからだそう(笑)。

 「バフェットピスターシュ」は、タルト生地にも、ムースリーヌにも、トッピングにも、贅沢にピスタチオを使っています。株式銘柄の一点買いする投資家、ウォーレン・バフェット氏にちなんでネーミングされました。

 「ミルクティー」は、特別注文の紅茶を使ったロイヤルミルクティーにラム酒を加えていて、ひと口目から強く香ります。大人のための、夜中に味わいたいミルクティー味のケーキです。

 「ベルガモット」は、ベルガモットの果汁を絞り付けたサブレで、フランス産蜂蜜だけを加えた生クリームをサンド。「サブレでクリームをすくってどうぞ」と勢海さん。

 マンガ「HUNTER×HUNTER」のキャラクターからネーミングされた「メルエム」は、チョコとピスタチオのケーキ。ピスタチオのプラリネ、ムース、ホールをふんだんに使い、アロマが香るブラジル産チョコでパリッとコーティング。ナッツの女王・ピスタチオ好きにはたまりません。

 「フレジェ」は、5月の母の日まで作っている季節のケーキ。「たくさんの方のご協力があって仕入れさせていただけるようになった大阪市中央卸売市場からの、特別なおいしい苺が主役です。僕自身がこのクリームと生地の組み合わせでこの苺を食べたいと思って作りました。フランスの同名のベーシックなケーキとは生地もクリームも違うし、苺を洋酒に漬けることもありません。フレジェと呼ぶにはふさわしくないかもしれませんが、苺が主役なので、そう名づけました。苺の値段が変動するので、時価なんです(笑)」。

 「ムラングシャンテリィ」は、苦味が出るまで焦がしたキャラメルのクリームをメレンゲと味わう一品。すぐ湿気ってしまうメレンゲは袋に入れて添えてあります。勢海さんは全てのお菓子に甜菜糖を使用しているので、メレンゲもベージュ色。あと口に残らない優しい甘さです。さっくりした歯ざわりのメレンゲとほろ苦いクリームが口の中ですうっと消え、お酒にも合う味わい。

 「めっちゃいい卵の黄身だけを使っています」と、勢海さん自慢の「クレームカラメル」。卵のまろやかな風味が広がり、絶妙な硬さで、虜になるおいしさです。

 「マロン」は、クリームとムースにフランス産栗を使用。ベースはジェノワーズ生地で、合わせた生クリームにはマスカルポーネを加えるなど、独自の工夫を凝らしています。2月中で終了する季節菓子。

 お店に並ぶお菓子を作るのは、黒田勢海さんひとり。「お菓子に興味はなかったのに、突然、ハマってしまった」。24歳の時、プリンを作ってみたくなったのだそう。作り始めたら面白くなって、プロの講習会に参加するなど、独学で腕を磨きます。自分の店を持とうと銀行からお金を借り、2018年に開業。

 「自分が食べたいお菓子を作っています。全くの独学なので、お菓子について一つ知識を得ると、五つくらいわからないことが発覚する(笑)。まだまだ全然、これからです。もっともっと上手になりたい」と勢海さん。「少しずつお菓子作りが上手くなっているのを温かく見守ってくれる人との出会いで、今日までやってこれている」と言います。縛られるもののない、自由な発想で作られる、ここだけのお菓子なのです。

「出来立てを味わってもらえる喫茶店を開きたい。自分が好きなコーヒーや紅茶、お酒も出して、パンも焼きたい。軽食も作りたい」。勢海さんの夢は広がっていて、早々に実現しそうな勢いです。

OKASHI SEKAIYAN(オカシ セカイヤン)

所在地 大阪市北区松が枝町7-4 あけのべビル1階
電話番号 090-1675-1919
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Column

そおだよおこの関西おいしい、おやつ紀行

生まれも育ちも神戸の生粋の神戸っ子で、長年の関西での取材経験からおいしいお店を知り尽くしている、ライターのそおだよおこさんが、関西の「今、食べてほしい!」というおやつを紹介します。

2023.02.12(日)
文・撮影=そおだよおこ