作家の平松洋子さん、コラムニストの門上武司さんは深い知識に加え、食と人、暮らしを繫ぐ食文化の提唱者。安定した老舗の味から気鋭の若手職人の味まで100年先の未来にも繫がる贈りものをご紹介いただきます。
今回は惣菜・つまみ篇です。高い志と技術で丁寧につくられる品々は、食卓を豊かに、そして華やかにしてくれます。心も舌も満足させる逸品の数々。
丁寧に、誠実につくられた緻密な味わいのものを贈る
平松 大寅蒲鉾は以前、製造工程を見せていただいて、素材選びからすべて人の目が通っている、嘘のない誠実なつくり方をされているなと。特に年末年始に贈りたい。大寅は大阪の味そのものですね。
門上 甘みはまさに大阪ですね。
平松 くいっと歯ごたえの引きも強くて華やかなところが大阪らしいなと。一方、山さきの江戸前玉子焼きは、味が濃いめ、甘みもしっかりあるお江戸の味。玉子焼きって実はけっこう好みがありますよね。
門上 私は東京で甘い玉子焼きのおいしさを知りました。おいしいというのはほとんどが好みで言わはるんで、自分の好みと違っても完成度が高いと思ったときは新しい世界が広がります。
平松 もし自分の好みの範疇を外れても、別のおいしさもあるんだなって楽しんでもらえたら嬉しい。贈りものは微妙な感情も含んだ行為だとわかったうえで選ぶといいのかもしれませんね。
門上 METZGEREI KUSUDAは信頼を置いている店。店主の楠田裕彦さんはシャルキュトリー文化を日本に根付かせたいという意志がありその想いが商品の一つひとつに表現されています。
平松 とても清潔なおいしさ。素材と向き合う仕事がこの味に結実していることが伝わってきます。つくり手の姿勢がおのずと伝わるものを選ぶのも大事なのかなと思います。
門上 きよ味やの辛子明太子がまさしくそうで、以前に平松さんにお贈りして「明太子の概念を覆すおいしさ」というコメントをいただき嬉しかった一品。
平松 ピュアな味わいに驚いたんです。
門上 手づくりで量はつくれないそうなので、ここぞというときに贈ります。
平松 山椒好きとしては、この塩生山椒の味わいに歓声を上げてしまいます。
門上 ごはん、肉料理、お菓子など何にでも使えて味の変化が楽しめて、これはようできてるなと。
平松 もうひとつ東京の味を。四谷 志乃多寿司のかんぴょう巻きといなり寿司で助六と呼ばれる組み合わせです。
門上 これはそそられますね(笑)。大阪ではバッテラや鯖寿司ですから。
平松 家に招かれたときや差し入れなど、パッと開けてつまめるのもいいし、場を和ませてくれるのもこういう庶民的な食べものの良さです。
ご飯はもちろん、しゃぶしゃぶや煮魚にも使いたい万能調味料
#01 味噌庵「塩生山椒」
希少な京都・大原産の山椒の実を、特製ブレンドの塩で味付けした生山椒。ごはんにかけておいしいのはもちろん、しゃぶしゃぶやステーキ、焼き魚や煮魚にも使いたい万能調味料。濃いめのバニラアイスにかけるのもおすすめだそう。
「山椒の風味がここまで生きた調味料は珍しい」(門上さん)
味噌庵
電話番号 075-744-2240
賞味・消費期限 1カ月
http://www.misoan.jp/
※通販可
●購入はオンラインショップから
素材選びから手抜きのない仕事 おいしさと一緒に安心も贈る
#02 大寅蒲鉾「大寅極上焼蒲鉾詰合せ」
1876(明治9)年創業の蒲鉾専門店。鱧を主体に使うのが大阪の蒲鉾の特徴だが大寅蒲鉾では鱧の一番身という最初にとれた身だけを使用。昔ながらの御影石の石臼できめ細かく練り上げる。蒲鉾板に使用する吉野杉の柾目には香りへのこだわりを感じる。
「むっちりとして風味豊か。自分でもよく購入しています」(平松さん)
大寅蒲鉾
フリーダイヤル 0120-5947-33
FAX 06-6633-1008
賞味・消費期限 7日
https://www.daitora.jp/
※通販可
2023.01.21(土)
Text=Motoko Saito
Photographs=Naruyasu Nabeshima
Cooperation=UTUWA