この記事の連載

澤部 渡さん[ミュージシャン]

Q1:最愛の一作

『神戸在住』(木村紺/講談社)

 どうしても一作に絞りきれませんでした。この作品は自分が今のようにマンガを読むようになった大きなきっかけの作品です。何かが起こる(こともありますが)わけでもなく、淡々と過ぎていく日常を切り取る様は、スカートも大きく影響を受けています。

『菫画報』(小原愼司/講談社)

 ジェットコースター少女マンガ。イメージの飛躍が美しく、もしかしたら1巻はとっつきにくいかもしれませんが、あるときはハード、あるときはスウィートに物語が進むのが最高です。

Q2:マンガを読むスタイルは?

 紙がもっぱらです。自宅で読むことが多いのですが、コロナ禍以前は移動中の電車内で読むのが好きでした。帰り道だと読み終えるよりも早く駅に着いてしまうこともあり、そういうときは駅のベンチで最後まで読んでいたんですが、あの時間が好きでした。

Q3:夜ふかしマンガ大賞に推薦した作品とその理由

『これ描いて死ね』(とよ田みのる/小学館)

 とよ田みのるさんの作品は高校生のころから好きなのですが、ここ数作のエンジンの掛かりようはちょっと異常です。スピード感がすごいのに登場人物の勢いは丁寧に描かれているような気がして、その感覚が心地よいです。

『ダンピアのおいしい冒険』(トマトスープ/イースト・プレス)

 今一番ワクワクしながら読んでいるマンガです。実在した人物をモデルにした作品ですが、堅苦しくなく、でもハード。可愛い絵柄との奇妙な相乗効果がたまりません。

『ブランクスペース』(熊倉献/ヒーローズ)

 いま一番ヒヤヒヤしながら読んでいるマンガです。

Q4:各部門への推薦作品とその理由

●音楽部門

『音盤紀行』(毛塚了一郎/KADOKAWA)

 レコードにまつわる物語をおさめたオムニバス作品。毛塚さんの初単行本。音楽好きだったら読んでほしいし、レコードが好きだったら絶対読んでほしい。ものがそこにある、ということがいかに素晴らしいかということを改めて実感しました。

●青田買い部門

『あさがくる』(ほそやゆきの/講談社)

 今一番新しいマンガを心待ちにしている作家さんです。登場人物の揺れ方が最高。

●コッソリ部門

『ヴォイニッチ・ホテル』(道満晴明/秋田書店)

 猥雑でナンセンス。なのに妙にシリアスでファンタジーもふんだん。とにかく惹きつけられます。

澤部 渡(さわべ・わたる)
ミュージシャン

ポップバンド「スカート」主宰。音楽とマンガを愛するマルチプレイヤー。数々の楽曲提供やアニメ、映画などの劇伴に携わる。新曲「しるしをたどる」好評配信中。

2022.12.12(月)
Text=Ritsuko Oshima(Giraffe)

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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