この記事の連載

SYOさん[物書き]

Q1:最愛の一作

『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平/集英社)

 あまりにも完璧な第1話で完全に虜に。画力が圧倒的に高く、日米のマンガ・映画文化を融合させた表現も秀逸。読者が疑問を持ちそうなところを先に説明してくれる精緻な世界観設計、熱量がまるで落ちない筋運びなど、どれをとっても最高ですが、なかでも主人公・緑谷出久くんの人物像に惹かれ続けています。どれだけ強くなっても〈誰かに救けられてここにいる〉〈(僕は)人に恵まれた〉と原点(オリジン)を忘れずに努力し続ける彼は、出会ったときからずっと僕のヒーローです。

Q2:マンガを読むスタイルは?

 初読の場合は、紙・WEBともに家の寝室にこもって読むことが多いです。余計な情報が入ると作品と100%で向き合えないので、密室&無音の環境を整えてから臨みます。お気に入りは、仕事の合間の切り替えになど、何回も繰り返し読みます。

Q3:夜ふかしマンガ大賞に推薦した作品とその理由

『さよなら絵梨』(藤本タツキ/集英社)

 本作は「母の死を映画にする」男子高校生と、唯一その才能を認める少女の物語。「スマホで撮影している」状態を示したシンプルなコマ割りは、マンガ的な“動き”を廃した挑戦的なアプローチですが、モキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)の雰囲気を生み出していて「マンガだけど実写っぽい」不思議な感覚に。そこにファンタジーの要素が盛り込まれ、リアル/アンリアルの境界を彷徨う主人公と観客の感覚・状態がシンクロしていきます。ただただ「凄い」作品です。

『タコピーの原罪』(タイザン5/集英社)

 新しさはどこから生まれるのか? に対する一つの回答といえるのが、本作。「悪夢版ドラえもん」と評されるとおり、前半の基本構造は過去の名作に倣いながら、その先へと変態(メタモルフォーゼ)していく実に現代的なアプローチが光ります。

『恋じゃねえから』(渡辺ペコ/講談社)

 前作で夫婦のあり方を問うた渡辺ペコさんの新境地。健全な社会を作っていくための『理解』を促してくれる。

Q4:各部門への推薦作品とその理由

●戦争部門

『ナンバー吾』(松本大洋/小学館)

 直接的に戦争を描く傑作は数多いですが、なぜ人と人は争うのか? という根源的なテーマに踏み込む作品に惹かれます。本作は、近未来を舞台にしたSF。終わらない諍いに終止符を打つべく、人類が生み出した「超人類」。特殊能力を持った彼らは「国際平和隊」を結成するが、幹部のひとり・吾(ファイブ)の裏切りによって隊内は混沌とし、世界全体を巻き込んだ新たな争いが勃発する―。新しく生み出したものが、旧来のシステムに飲み込まれ、災厄を呼ぶという流れに、人類の争いの歴史を感じます。

SYO(しょー)
物書き

映画やドラマ、アニメといったエンタメ系からライフスタイルまで幅広く執筆。これまでインタビューした人物は300人を超える。Twitter:@Syocinema

2022.12.12(月)
Text=Ritsuko Oshima(Giraffe)

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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