この記事の連載

看板支配人が語るリュクスな館内の秘密

 パンデミックも吹き飛ばすようなダイナミックな改築の後、当館はさっそくワールド・ラグジュアリー・ホテル・アワードのラグジュアリー・ヘリテイジ・ホテル部門賞などステータスある賞に多数輝いた。

 オーナーはロンドン、パリ、ニューヨークなど全世界で30軒ものラグジュアリー・ホテルを経営するホスピタリティのプロだけに、地元のヘリテイジ、「ヘルヴェティア&ブリストル」のポテンシャルを見抜いていたのだろう。

 世界を飛び回る経営陣に代わって、変遷を見守りつづける看板支配人フェデリコ・ヴェルサーリ氏に、話を伺った。

 「ファブリ社長はこのホテルを大変贔屓にしていて、イル・ミオ・ジョイエッロ(私のジュエリー)と呼んで磨き上げたのです」と、人懐こい笑顔で語る支配人。

「改築により旧館を『ヘルヴェティア』、新館を『ブリストル』と区分けしました。『ヘルヴェティア』館は、19世紀の様式を大切に、全館をくまなく修復しました。約200点あった17~18世紀のテーブルや椅子は、フィレンツェのカシャーニ工房で直し、カーテンや壁布などはフィレンツェ伝統絹織物工房で新調しました」

 カシャーニ工房は、ウフィツィや海外の美術館の作品を手がける世界的トップの修復工房だ。

「一方『ブリストル』館は、ファブリ社長のお気に入りのインテリア・デザイナー、アヌーシュカ・ヘンペルに依頼しました。こちらの鏡や大理石モザイクのテーブル、ファブリックなどもフィレンツェの伝統工房のものです。タイムレスな落ち着いたデザインと評判をいただいております」

 アヌーシュカ・ヘンペルは、英国を拠点に世界で活躍するラグジュアリー専門デザイナー。一見シンプルに見える空間だが、職人の手になるインテリアは密度濃く、どこか温もりが伝わってくる。

 全館をあげて、伝統職人工房ものを使用となるとコストもかなりであろうが、工房存続に大貢献したと言える。

 街中には中世からの伝統をもつボッテーガと呼ばれる工房があり、それを使い分け、支え続けてきた市民がいるからこそ今日まで伝統の技が伝えられ、未来に継承するコアとなっているのだ。

 最後に支配人におすすめのステイ法を聞いてみた。

「最高の立地なので、庭を散歩するように古都を楽しんでいただきたい。そして、フィレンツェ伝統の粋が満ちる館内をフル活用して、ごゆっくりくつろいでいただけたら幸いです」

ホテルの全ての画像を見る

Helvetia&Bristol(ヘルヴェティア&ブリストル)

所在地 Via dei Pescioni 2, 50123 Firenze
電話番号 +39 055 26651
客室数 89室
料金 1室 550ユーロ~
https://collezione.starhotels.com/en/

次の話を読む美を極めた街・フィレンツェを一望 歴史とモダンが融合する進化系ホテル 【今、イタリアに行くなら】

← この連載をはじめから読む

Column

CREA Traveller

文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。

2022.11.10(木)
文=大平美智子
撮影=仁木岳彦

CREA Traveller 2022 vol.4
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

HOTEL 愛しきあの街のホテルへ

CREA Traveller 2022 vol.4

HOTEL 愛しきあの街のホテルへ

特別定価1,400円 (税込)

「CREA Traveller」2022 vol.4の特集は、「愛しきあの街のホテルへ」。