●瀬戸内の海によって解放された現場

――19年、映画『下忍 赤い影/青い影』では忍者アクションに挑戦。坂口拓さん監修によるアクションは、「ルパパト」でのアクションとはかなり違ったかと思います。

 拓さんはとてもリアリティを求める方で、「ルパパト」のときとは全然違いました。映画には5分ぐらいのワンカット撮影があるんですが、撮影当日にそれが決まったんです。なので、短時間でその殺陣を覚えるのが、めちゃくちゃ大変でした。

――そして、最新出演作『凪の島』では、島の漁師・守屋浩平を演じられています。今回の役作りについては?

 これまで漁どころか、釣りもしたことがなかったので、釣り好きの友だちと釣りに行くところから始めました(笑)。また、浩平は吃音症の設定ではあるんですが、長澤雅彦監督と話し合って、できるだけポジティブに捉えて、演じるように心掛けました。あと、瀬戸内の海によって解放された気持ちになれたのも大きかったです。浩平は僕と同い年の設定ですが、まっすぐでピュアで行動力があるんです。そこに、彼のカッコ良さを感じました。

――そんな瀬戸内での撮影の思い出は?

 コロナ禍での撮影のため、みんなで食事をすることもできず、現場とホテルの往復だったのですが、そのあいだに寄るスーパーで買ったお刺身がご褒美でした! 都内のスーパーで買ったものとは味が全然違っていて、とにかく新鮮なんです。

●観た人の心を揺さぶる役者に

――島崎遥香さん演じる教師・瑞樹との結婚式シーンの感想は?

 最初に台本を読んだとき、これまでいろいろなことがあった浩平にとって、このうえない幸せの瞬間だなと思ったんです。なので、このシーンを観るお客さんにも幸せになってもらいたいなという気持ちで演じました。僕はこれまで、結婚にあまり興味がなかったんですが、この撮影を通じて、結婚して幸せになることって素敵なことだなと思えるようになりましたね。

――最後に、今後の展望や目標を教えてください。

 一人の表現者として、作品を観てくれた人の心を少しでも揺さぶることができるような役者になりたいです。ドラマ「僕だけが17歳の世界で」のときに、「もう厳しいかな?」と思いましたが、まだまだ学生役もやっていきたいですし(笑)。また、唯一無二の持ち味を出せるような俳優に憧れます。

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結木滉星(ゆうき・こうせい)

1994年12月10日生まれ。大分県出身。高校時代に事務所にスカウトされ、2012年よりドラマや舞台などで、俳優として活動。18年、スーパー戦隊シリーズ「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」の朝加圭一郎 / パトレン1号役では、ドラマ初主演を務めた。現在、ドラマ「テッパチ!」(第2部)に出演中。

『凪の島』

両親の離婚から、母・真央(加藤ローサ)の故郷である瀬戸内の小さな島に引越した小学4年生の凪(新津ちせ)。普段は明るく振る舞う凪だったが、アルコール依存症の父・純也(徳井義実)が母に暴力を振るう姿がトラウマとなっていた。担任教師の瑞樹(島崎遥香)や漁師の浩平(結木滉星)など、島の人々はそんな凪の事情を知ったうえで、温かく接するのだった。
© 2022『凪の島』製作委員会
8月19日(金)より新宿ピカデリー、MOVIX周南ほか全国順次公開
http://nagishima.com/

Column

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2022.07.29(金)
文=くれい響
撮影=平松市聖
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スタイリスト=伊藤省吾 (sitor)