「生きている感じ」を大切に
――『ロマンス暴風域』の民生も、『ちむどんどん』の金吾も、物語の中の架空の人物止まりでなく、リアルにいそうな空気感が出ています。それこそが渡辺さんのお話しするところの表現をすることなのかなと感じます。
(金吾は)だいぶぶっとんだ奴なんですけどね(笑)。
自分が役をいただいて一番大事にしているのは、鼓動感みたいなところです。裸でもなければ、脈を打っている感じは伝わらないかもしれない、画には映ってないかもしれないですけど、「生きている感じ」は大事にしています。ドキドキしているとしたら、その心臓の音まで聞こえてきそうな、身体の中にある鼓動の音を響かせられたら、というのをどの仕事をするときも意識していて。
だから、「こんな役がやりたい」とかはないんです。自分にとってはどんな役でも、ちゃんと生きた人間としてのある種のどろくささ、人間くささみたいなものが出せればと思っているので。
――民生に関しては、現時点でどんなプランでやっているんですか?
佐藤民生という人間を殺したくなくて、生き生きさせたいと思ってやっています。役柄としては孤独感があり、無気力感があるような人物だけど、ごはんを食べて、寝て、たくましく生きているひとりの人間だということを、一番根底に置いて大事にしたいと思っています。ぱっと見て、「ああ、なんか生きてるな、生きてる人間って感じがするな」というのを表したいですね。
――発表時のコメントで民生のことを「孤独を埋めようともがく」とも表現されていました。孤独を埋める作業みたいなものは、渡辺さん自身されたり意識したりしますか?
僕は、人間というのはそもそも孤独な生き物というか、誰かと一緒にいたとしても孤独なものだと思っています。正直なところを言うと、例えば恋愛にいくら情熱的に燃えたとしても、人間は孤独なんじゃないかという考えではあるんです。
けど、その孤独を見せ合えることはすごく重要なことというか。誰かが近くにいることで、自分の孤独に気づけるのは人間としてすごく必要なことな気もしているんです。自分のさびしさに気づかないのが一番不健康な感じがするので、「さびしい」と言えることがすごく重要なことだと思っています。
渡辺大知(わたなべ・だいち)
1990年8月8日生まれ。兵庫県出身。高校在学中の2007年にロックバンド「黒猫チェルシー」を結成。2010年にメジャーデビュー。俳優としては2009年に映画『色即ぜねれいしょん』に出演し、日本アカデミー賞新人俳優賞授賞を受賞。2014年の初映画監督作品『モーターズ』ではPFFアワード・審査員特別賞を受賞するなど様々な活躍を見せている。
ドラマイズム『ロマンス暴風域』
MBS/TBSドラマイズム枠にて7月5日(火)より放送スタート!
MBS 毎週火曜 24:59~(※初回は25:19~)/TBS 毎週火曜 24:58~(※初回は25:50~)
TBS放送後、TVer・GYAO!・MBS動画イズムにて見逃し配信。
原作:鳥飼茜「ロマンス暴風域」(扶桑社)
出演:渡辺大知 工藤 遥 小野花梨 内田理央 他
監督:児山隆(『猿楽町で会いましょう』)
脚本:開真理(「シジュウカラ」)
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
製作:「ロマンス暴風域」製作委員会・MBS
©「ロマンス暴風域」製作委員会・MBS
https://www.mbs.jp/romance_bofuiki/
2022.07.05(火)
文=赤山恭子
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=佐鳥麻子
スタイリスト=Shinya Tokita