「実写にしかない良さが伝わったらいいな」

 センセーショナルなタイトルが目を引く漫画『明日、私は誰かのカノジョ』は、現在、累計300万部を突破し人気を博している。

 登場人物は、彼女代行としてお金を稼ぐ「レンタル彼女」の女子大生や、パパ活に精を出す同級生、整形依存の女性など、個性豊かなキャラクターばかり。現代社会のどこかにいる“かもしれない”女性たちのリアルを、巧みな心理描写でディープに表現しているのが病みつきになる要素だ。

 そんな話題作が初の実写ドラマ化を迎え、主人公のレンタル彼女業を行う白井雪を吉川 愛さんが演じている。

 情報解禁時から「雪にハマっている」、「ぴったり!」とSNSも賞賛で大合唱だったが、本人は果たしてどう受け止め、演じているのだろうか?

 また、吉川さんといえば先日行われた2022年日本アカデミー賞では新人俳優賞を受賞したばかり。勢いに乗る吉川さんの今の思い、その素顔に迫った。


「自分」になるべく嘘をつかないように演じる

――『明日、私は誰かのカノジョ』主演の雪に抜擢されて、どう思いましたか? SNSなどでは「ぴったり!」と大盛り上がりでした。

 お話をいただく少し前くらいに、友達から「見た目や雰囲気が雪に似ているよね。いつか実写化したとき、演じられたらいいね!」と言われたことがあったんです。だから「あ! 本当に演じられるんだ!」と、すごくうれしかったです。

――雪は心に傷を抱えながら、彼女代行としてお金を稼いでいます。演じる上で共感したポイントはありましたか? 吉川さんと似ている部分はなさそうですが……。

 そうですね、私とは似ていないですね……(笑)。でも雪ちゃんには、台詞を言いながらはっとさせられることがあります。

 例えば、「後で謝るぐらいだったら、人が傷つくようなことを言わなきゃいいじゃん」という台詞には「本当にそうだよね」と思いました。当たり前のことでも、雪ちゃんが改めてスパッと言うときにはドキっとさせられて、私自身もちゃんとできていたかな、と思わず振り返ったりします。

――レンタル彼女としての雪と、素の雪との差はどう出していったんですか?

 レンタル彼女を演じながら、さらに(役を)演じているので、難しいところでした。レンタル彼女のときは「妹系で」、「スポーティーで」とレンタルする側からリクエストがあるので、要望に応えつつも不自然になりすぎないように意識しています。雪ちゃん自身はレンタル業に慣れているので、わざとらしくなく、なるべくベテラン感が出るように。

 素の雪ちゃんはあまり自分を見せないタイプですけど「雪ちゃんらしさ」がちゃんと出るようにと思って工夫しています。

――両方とも異なる難しさがあり、演じ甲斐がありそうですね。

 自分になるべく嘘をつかないように心がけています。「こう動きたい」と私自身が思ったら、動くようにしているんです。

 「原作だったら、こんな表情しないよ」と思われる方もたくさんいるかもしれないですけど、ちょっと笑いたくなって、そのほうが自然なら、笑う。感情的な部分で嘘をつかないように心がけています。

2022.04.19(火)
文=赤山恭子
撮影=平松市聖