「ちゃんと本物になれればいいな」と思いながら
“見られる”職業である役者は、変化も成長もその道程の多くが可視化されるものだ。幼少期から芸能活動を続ける大島優子においては、よりその意味合いが強いことだろう。
子役からAKB48へ、卒業後は俳優としてより活動の“色”が多彩に――。渾身の演技を披露した『生きちゃった』や『明日の食卓』のようなシリアスな作品から、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』のような遊び心満載のエンタメ、NHK大河ドラマ『青天を衝け』まで、近年ますます幅を広げた感のある大島。
彼女の最新出演作は、重松清のベストセラー小説を初映画化した『とんび』(2022年4月8日公開)。不慮の事故で妻を亡くした夫と、幼い息子が歩んでいく年月を描いた人情劇だ。これまで2回TVドラマ化され、堤真一×池松壮亮、内野聖陽×佐藤健が親子を演じてきた。映画版では、阿部寛と北村匠海が父・ヤスと息子・アキラ役を務める。
大島が本作で演じたのは、ヤスの幼なじみである照雲(安田顕)の妻・幸恵。不器用で誤解を招きやすいヤスとアキラをつなぐ理解者であり、アキラの第2の両親のような存在だ。昭和の空気感に見事に溶け込んだ大島に、作品と歩んだ日々や近年の“変化”を伺った。
――瀬々敬久監督とは、『明日の食卓』に続くタッグです。またがらりと異なるキャラクターでしたね。
全く違いますよね! 瀬々監督もおっしゃっていたように、今回はお祭りパートといいますか、皆さんが集合している中で盛り上げる賑やかし的な役割を、安田顕さんと私が演じる夫婦が担っている感じです。
瀬々監督はとにかく「一員だから」とおっしゃっていました。近所のみんなで子どもの成長を見守っていく家族のような感覚で演じてほしい、と教えていただきましたね。
――その“家族”という部分、『明日の食卓』との共通項でもありますね。あちらが現代だとしたら、『とんび』は近過去。劇中で描かれる「コミュニティで子どもを見守る」関係は、いまの日本社会では失われつつあります。
私が小さい頃にはまだこういうものがあったなとすごく思い出しました。台本を読んだときに最初にこみあげたのは“懐かしさ”でしたし、完成した映画を観ていても「いまはないよな、日本のどこかにあるんだろうか」とふと考えました。難しい時代だからこそ、この作品が現代の人々にどう響くのかは気になるところです。年齢的に懐かしむ世代や、「へぇ」と思う世代もいるでしょうから。
2022.04.06(水)
文=SYO
撮影=深野未季