「皮膚から2ミリくらいのところで演じていた感覚だった」

――瀬々監督もそうですが、『ロマンス』のタナダユキ監督や『生きちゃった』の石井裕也監督など、これまで数多くの名監督と組まれてきたかと思います。印象に残っている言葉など、ありますか?

 タナダさんからも石井さんからも「男前だ」と言われました(笑)。これは他の監督もおっしゃっていて、たぶんタフってことなんだろうなと思っています。自分から「なんでですか?」と聞いたことがないので真相はわかりませんが、「やるぞ」ってなったら覚悟を決めて集中力高めでやるところとか、そういう肝の据わり方なのかな? って(笑)。

――そのお話でいうと、思い出すのは『生きちゃった』です。かなりハードな役どころだったかと思いますが、当時の大島さんのコメントを拝見すると「心が裸になったような感覚だった」と話されていて、演じるということに大きな変化があったのかなと感じました。

 そうですね、すごく変わりました。今まで演技なんてできてなかったんだとさえ思いました。

――それほどだったのですね……。

 はい。今までもその都度その都度全力で演技していたつもりだったけど、まだまだだった……と感じました。

 『生きちゃった』まで、自分なりにお芝居とは? を追求して、試行錯誤しながらやっていたのですが、いま思うと皮膚から2ミリくらいのところで演じていた感覚なんです。いまは内臓からその感情になって発するようにしようと思っていて、そうなってからすごく変わりました。

――そういったマインドに変わったのはグラデーションなのか、どこかの瞬間にパキッと変わったのか、どちらでしょう?

 大きかったのは留学ですね。3年ほど前に留学から帰ってきたのですが、それまでは人の評価をすごく気にしていたんです。でも留学期間を経てそれが取っ払われて、人からどう思われるかは気にならなくなりました。そこじゃなくて、もっと自分の中から出てくるものをちゃんと放出できるようにいたい! と思うようになったんです。

――『生きちゃった』『明日の食卓』等々、近年のフィルモグラフィに通じるものがありますね。

 ちゃんと本物になれればいいなというのはすごく思いながらやっています。演技は演技ですが、そこに真実味を出せるようになりたいです。

2022.04.06(水)
文=SYO
撮影=深野未季