朝ドラ史上初めて、祖母・母・娘、三世代の女性たちをヒロインとしたファミリーストーリー「カムカムエヴリバディ」。

 前作「おかえりモネ」で震災を契機とした「若者たちの10年」をゆっくり観てきたと思ったら、今度はジェットコースターのような「家族の100年」!  展開のスピード感が半端ないです。

 現在、1人目のヒロイン・上白石萌音から2人目のヒロイン・深津絵里にバトンタッチ。ここまでのストーリーで、「カムカムエヴリバディ」が信頼できるドラマだということがわかってきました。今回は「カムカム」のココ凄ポイントを紹介していきます。


家族を美談で語らない

 当初、「三世代の女性たちが紡いでいく、100年のファミリーストーリー」という謳い文句を目にした時、ちょっと警戒していた部分がありました。朝ドラという枠で考えれば家族をしっかり描くということに違和感はないのですが、今あえてヒロインの成長記ではなく「家族」と強調する物語をつくるのは「家族の絆」の押し付けになるのではないか? と思っていたのです。

 家族というと未だに「サザエさん一家」のような温かいイメージを持つ人もいるかもしれませんが、家庭環境は人それぞれまったく違うもの。すべての家族が愛に満ちているわけではありません。毒親、親ガチャという言葉が浸透しネグレクトの問題も露呈している現代において、「家族は絆で結ばれる」「わが子を大切に思わない親はいない」「家族は必ずわかりあえる」みたいな美徳をそのまま垂れ流すのはちょっと危ういのではないかと思っていたんです。

 育児や介護などのケア責任が規範的にも依然と家族に押し付けられています。家族の「個人化」や「多様化」が進んでいる今、「あなたの人生は、家族のためにあるのではない。あなたの人生は、誰が何と言おうと、あなただけのもの」ぐらいのメッセージの方が今は必要なのではないか? と。

 特に昨年は同性婚や選択的夫婦別姓が議論に挙がりながらも通らないという現実がありました。ラジオで片山さつきが選択的夫婦別姓に関して「そうすると『ファミリーヒストリー』みたいな番組が作れなくなってつまらない国になるなと(私は思う)」と否定的に語っていたのを聞いていたりしたので、ここにきて復古主義的な家族回帰、伝統的な家族観、血のつながりの重視を強調するような物語だったらどうしようと思っていたんです(「こども庁」が「こども家庭庁」に名称変更されたのもつらかった)。


 しかし! 観続けてよかった! 今は安心して観ています。最初のヒロイン・安子(上白石萌音)編の、トラウマになるほど心をえぐるラストを観て、このドラマは家族を美談で語らないのだなと確信しました。つらすぎる内容に放心状態になりましたが、これはきっと伏線。単純で平和な直接的に親子関係でつながっている家族の物語に仕上げないこの脚本は信頼できるという希望に変わりました。

2022.01.17(月)
文=綿貫大介