「どうなんだろう」と思って終わるより、1回経験してみようという考え方です

――将来的に人としてこうなっていきたい、という目標のようなものはありますか。

 本当に大きく言うと、「人生を豊かに」ということですね。そのことはすごく考えます。本当は、考えずに勝手にそうなっていくことが理想なんですけど。それには、全てのことが関わってくるんですよね。仕事もだし、人間関係、生活……すべてがそこに紐づいてくるからこそ、すべてを豊かにしていきたいと思っています。

 たとえば、今回のミュージカル『ボディガード』も、この先を豊かにするためのひとつだと思っていて、そういう生き方を心がけています。だから何か自分のアンテナに引っかかって始めたいなと思うことも、新しくいただいたお仕事にまつわるチャレンジも、楽しんで取り組みたいと思っています。なんかあんまりこんなことを言うと、面倒くさい奴だなと思われるかもしれませんが(笑)。

――いえいえ、そんな。

 楽しんで死んでいってなんぼじゃない?というのは、根本的にあると思います。だからこそ感謝が生まれると思うし、だからこそ気になったことがあれば経験しておきたいとも思うんです。「舞台ってどうなんだろう?」って思うだけで終わるより、まずは1回経験してみようという考え方です。

――それでもやっぱり、お仕事の中には大変なチャレンジもあると思います。その大変さも含めて、楽しもうとされるわけですか。

 残念ながら、なかなかそこまでは行き着けないですね(笑)。むしろ無理だなと思うことのほうが多くて、「しゃーないわ」って気持ちになったりしています。それでも時が過ぎれば、気持ちの面で解決できたりするじゃないですか。だって、どんなに頑張っても、今の自分の限界というものがあって、それはしゃーない(笑)。

 ただ、そのチャレンジに対して、今の自分の精一杯で臨むっていうのは当然のこととして。そうやって上を見て続けていくことで、「大変」とか「苦しい」よりも「楽しい」がちょっとでも上回っていったら、それはもう幸せじゃないのって僕は思うんで。

 仕事って、やっぱり楽しいだけじゃ済まないものだと思うんですよ。この世の中にはいろんな仕事をしている人がいて、それで社会というものが成り立っているわけで、そういう中で、自分がやりたいと思うことを仕事にできているって、すごく恵まれていると思うんです。ラッキーだなと。そう思ったら、多少の大変なことや苦しいことはクリアしていかなきゃいけないし、そうあるべきだと思っている、という感じですかね。

母からの教えは、自分の生きる指針となっています

――現在発売中のCREAが贈り物特集なのですが、大谷さんがこれまで贈られて嬉しかったもの、嬉しかった言葉、サプライズのイベントでもいいですし、なにか心に残るものがあれば教えていただけますか。

 何ですかね……(しばらく考えて)何か出したいな(笑)。でも、本当に何でもない時にかけられた「頑張ったね」みたいな言葉にすごく励まされることはよくあります。

――どういう方からの言葉が、とくに響きますか?

 身内からの言葉に励まされることは多いですね。家族とか、事務所のスタッフとか。本当にめちゃくちゃヘコんでいる時に、マネージャーからもらったLINEに救われたこともありました。

――励ましの言葉ですか?

 うん。それもあるし、別の視点からの助言もあって。でも、そういうことは多いですね。今って、いろんな意見が飛び交う時代だからこそ、本当に身近な人以外の周りの言葉に振り回されないようにしています。逆に今は、世間にどう思われてもいいや、というマインドになっているかもしれない。それより、家族だったり、本当に僕のことを思って動いてくれるスタッフのことを大事にしたいし、そこがまず第一歩だと思うんですよ。ただ、大事なんだけど、その肝心の言葉が何も思い出せない(笑)。

――忘れちゃうような日常の些細なことほど、気付かされることも多いし、大事だったりもしますよね。

 些細な言葉をかけられて、ハッとさせられる瞬間っていうのは、母からのことが多いですね。母からの教えは、今の自分の生きる指針となっている感じがしますね。だから、迷ったらよく、こういう時に母ならどう判断するかっていうのをすごく考えます。そういう時に、絶対間違えない人なんですよ。すごく天然ボケな部分もあるんですけど、人として間違ったことは絶対にやらないし、僕もそういう教育を受けてきました。もしかしたら、この業界的にはこっちの方が正しいかもしれないということがあっても、人としてはこっちだろうと思うことを選択する。それは家のことであっても。

――ご自身から、何か相談されることもあるんですか。

 悩みみたいなことは、きょうだいには結構話しますね。やっぱり信頼がおけるし、価値観が近かったりするので。

2021.12.26(日)
文=望月リサ
撮影=深野未季
ヘアメイク=MIZUHO(VITAMINS)
スタイリスト=伊藤省吾(sitor)