特異な発展を見せた“江戸園芸三花”の朝顔、花菖蒲、菊
こうした花卉園芸の中でも特異な発展を見せたのが朝顔、花菖蒲、菊の3種類だ。早朝に花を開き、夕べには萎れる朝顔のはかなさはまず、俳諧をたしなむ層の詩情をかき立てる。やがて突然変異によって花や葉に変化を起こした「変化朝顔」を持ち寄って比べ合う、「花合わせ」が盛んになっていった。
一方、花菖蒲にのめりこんだのは、京都町奉行などの要職を歴任した旗本、松平定朝だ。定朝が生涯に作り出したといわれる花菖蒲は約300種。その品種や栽培法を記した園芸書『花菖培養録』を著し、彼自身の手になる品種を惜しげもなく同好の士に分け与えたという。
右:葛飾北斎画 「菊図」右幅 弘化4年(1847) 一般財団法人北斎館蔵 (7/30~8/18展示)
また江戸時代以前から愛されてきた菊の栽培が、大名から庶民まで広がったこの時代には、近郊の植木屋によって菊を素材にさまざまな立体物を作って見せる興行が始まり、やがて「菊人形」が生み出されて行った。
今展ではこうした江戸の園芸文化を活写した浮世絵や、栽培技術の高さを伺うことのできる図譜など、さまざまな絵画資料を駆使して、世界でも稀に見る「園芸都市」としての江戸の素顔に迫る。
花開く 江戸の園芸
URL www.edo-engei.jp
会場 江戸東京博物館
会期 2013年7月30日~9月1日
休館日 月曜日(8月12日は開館)
開館時間 9:30~17:30、土曜日は21:00まで(入館は閉館30分前まで)
料金 一般800円ほか
問い合わせ先 03-3626-9974(江戸東京博物館)
Column
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古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。
2013.07.13(土)