植木鉢の普及で、美しい花や植物を身近で楽しむように

 一方、そうした美しい花や植物を身近でも楽しみたいと、手軽に持ち運べる植木鉢が普及。市中を移動しながら売る振り売りや縁日での販売(たとえば芝・愛宕神社で始まり、浅草寺で本家をしのぐほど盛んになった「ほおずき市」)などによって、人々の暮らしの中に溶けこんでいく。

戸田熊次郎著・狩野勝波画 「久留米藩江戸勤番長屋絵巻」 明治初期 江戸東京博物館蔵 (会期全日展示)
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坂昇春画 「赤坂御庭図(部分)」 文政末期(1827~30) 和歌山市立博物館蔵 (会期全日展示)
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左:鳥居清長画 「風俗東之錦 植木売り」 天明3~4年(1783~84) 個人蔵 (7/30~8/11展示) 右:歌川芳玉画 「見立松竹梅の内 うゑ木売の梅」 弘化年間(1843~47) 個人蔵 (8/12~9/1展示)
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「珍品」「奇品」を育てて自慢する、マニアも登場!

関根雲停画 「金糸南天」 江戸後期 雜花園文庫蔵 (会期全日展示)

 もちろんこの時代にも、ただ草花を愛でるだけでは済まない「マニア」がいた。一部の武士たちは、葉の形や斑の入り方、色などが他と異なる、「珍品」「奇品」を育てることに熱中。西欧の遺伝学を知らぬまま、橘、万年青、松葉蘭、南天、福寿草など、手探りの品種改良を繰り返し、作り出した「珍品」「奇品」を持ち寄り、手塩に掛けた自慢の「作品」を、美しい絵入りの印刷物に仕立てて、仲間内に配布──という、まるで現代の同人誌サークルのような活動を行っていた。

「椿図屏風」 年未詳 個人蔵・千葉市美術館寄託 (会期全日展示)
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関根雲停画 「小不老草名寄」 天保3年(1832) 雜花園文庫蔵(7/30~8/18展示)
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2013.07.13(土)