物語が際立ち、夢中にさせる音 ◎

©TBS
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 音楽と効果音の力はドラマをさらに魅力的なものにしてくれます。シーンの空気や温度感が伝わってきたり、登場人物の心情を深く理解できたり。そんな力を再認識させてくれるのがこのドラマです。

 まず、サントラが最高ですよね。どれもとても素敵ですが、特に私は洋楽っぽいサントラが好きで、あの曲を聴くと物語がまた新しく動き出す高揚感で胸が高鳴ります。

 色気漂う妖しいテンポとなぜか心地よい不協和音っぽいメロディ。不穏が近づいてくる足音のようでありながら、「物語が始まるぞ」とブラックボックスの中身が膨らみ、内側から開いてしまう音のようにも感じられます。

 また、第1話~4話までは冒頭のナレーションに入っていた、優しいピアノから入るメインテーマらしきサントラもとても素敵。梨央の故郷・白川の広い空にトンビが優雅に飛んでいるのが想像できます。

 誰もが幸せに過ごしていた、15年前の愛おしい大切な思い出を包み込むような温かみを感じる反面、願っても戻れない過去を梨央や優、大輝が見つめているようで……ストーリーの切なさがより際立ちます。

 そしてそんな魅力的なサントラをオフにして、セリフや息遣い、空間の音をわざと聴かせるところも憎いくらい秀逸で痺れます。

 特に痺れたポイントは、第4話で優が大輝に電話で証拠の動画があると教えている時。それまで、ずっと神経が研ぎ澄まされそうなサントラが流れていたのですが、優が「大ちゃん」と名前を呼ぶ刹那、その曲が吸い込まれるように消えるんです……。

 この瞬間、優のもう逃げないという諦めにも似た決意と、大輝の受けた衝撃がすさまじいものであったと気づかされます。

 また第5話のラストでは、加瀬さんの元へ梨央から「助けて」のメッセージが届いた瞬間にエンディングテーマが消え、それを見た加瀬さんが「了解」とつぶやくと、風の音とともに俯瞰の映像に切り替わる。逆襲開始の追い風が吹いたようでとても格好よかったです……。

 もう……罪深い! ありがとうございます! もう◎しかないです! そして早くサントラ発売してもらいたいです。

2021.11.18(木)
文=畑井 優