「ドラマがあれば生きていける」
ライフワークがドラマ鑑賞で、新しく素敵な俳優や監督、脚本家やスタッフを探して推すのが趣味という畑井 優さんが、今クールのドラマの見どころを徹底紹介! 通信簿をつけていきます。
今回は「お耳に合いましたら。」(テレビ東京系 毎週木曜深夜0時30分~)を採点。
最終回直前ということもあり、これまでの振り返りも含んでいるので未見の人はネタバレ注意。でも「お耳に合いましたら。」ファンはもちろん、ドラマ好きなら読んで損なしです!
毎週楽しみがある生活って、素敵なもの。好きなドラマがあればそんな素敵な生活が約束されますよ。
登場人物たちに会いたくなる、身近さが愛おしい「お耳に合いましたら。」
【あらすじ】
主人公・高村美園(伊藤万理華)があるきっかけからポッドキャスト番組をはじめていくパーソナリティ成長記。配信する番組のテーマは、主人公が愛してやまない「どこの街にもある、決して特別ではない、でも欲さずにはいられない」魅惑のチェーン店グルメ・通称“チェンメシ”。
毎話ごとに、多くの人が知っている人気チェーン店が登場し、主人公がそこのメニューを食べながら、ありったけの<好き>を込めて、その“チェンメシ愛”を語っていきます。ポッドキャスト番組の配信を通して起こる、恋愛、友情、親子など様々な人間関係の変化を描きながら、配信を重ねるうちに、身近なリスナーたちが番組づくりに協力したり、会社で思わぬ反響が起こったりして……。
私の耳にジャストフィット! ◎
「お耳に合いましたら。」はラジオオタクのOLが、夢だったパーソナリティーになって毎回チェーン店のご飯“チェンメシ”を食べるただの飯テロドラマ、ではありません。
毎話毎話クセの強いキャラクター達が登場し、主人公・美園を振り回したり逆に彼女に振り回されたりしながら、独特のひらめきやラジオ好きの力とパーソナリティ―の経験から得た“伝える力”で悩みを克服したり、過去の自分にかかっていた靄を晴らしていく成長物語でもあるのです。
ドラマの鍵は「ポッドキャスト」。美園が“チェンメシ”の蓋を開けて香りをかいだ瞬間に“チェンメシワールド”に没入してポッドキャストが始まります。彼女の周りで起こったことの顛末、その時の思いや気持ちを言葉に乗せて赤裸々に伝えてくれます。
毎話必ず語られる“チェンメシ”は彼女の思い出でもあります。その語り口は本当にラジオのよう。美園の話を目の前で聞いているかのようで、脳内で映像が再生されている感覚になりながら楽しめます。
そして美園が落ち込んでいる時、肯定しながら慰めてくれたり、あと一歩踏み出したい時に背中を押してくれたりするレジェンドパーソナリティーたちが持つさすがの説得力。皆さん良い声すぎます……。各話でそれぞれのお店の制服を着ているところも素敵なポイントです。
美園の周りで起こるトラブルに毎話てんやわんやしながら、喜んだり、優しさに触れたりしながら過ごす日常と、彼女の頭の中で繰り広げられる世界に没入してポッドキャストを配信する非日常とのギャップをテンポよく楽しませてくれます。飽きが来ません。お耳に合います。もちろん◎です。
“チェンメシ”の飯テロ度 ◎
冒頭で「ただの飯テロドラマではない」と書いていましたが、あくまで“ただの”飯テロでないということ。なかなか凶悪な飯テロ犯の側面もあるわけで……。
企画・原案・プロデュースを担当している畑中翔太さんのとあるインタビュー記事を読んだのですが、ただのチェーン店ではなく「誰かが本当に大好きなチェーン店」を選んでいるとのこと。
吉野家やすき家ではなく松屋、マクドナルドやモスバーガーではなくドムドムバーガー……。そんなお店のチョイスは現実の誰かの“チェンメシ”愛からセレクトされているのです。なるほど、画面から迸る熱量に圧倒され、見たあとにすぐ行きたくてたまらなくなるわけです。
“ジョナサン回”が放送された翌日、実際にお店に行ってみたところ、美園たちが食べていた「タンドリーチキン&メキシカンピラフ」が売り切れていました……。悔しい! がっかりしつつも、近所に“お耳ファン”がいたのだなと少しうれしい気持ちになりながら、劇中に出てきたポテトフライ(トリュフ塩仕立て)を堪能しました。
私情を挟みますがこのドラマで初めてドムドムバーガーとフライングガーデンの存在を知りました。現在ドムドム欲が非常に高まっております。フライングガーデンも行きたいっ……! まさに飯テロ度、◎です。
2021.09.29(水)
文=畑井 優