最初から最後まで楽しませる遊び心 ◎

「お耳に合いましたら。」公式HPより。
「お耳に合いましたら。」公式HPより。

 OPのセットが何より可愛いのですよ~!! 段ボールや厚紙、紙コップや卵パックなど身近なもので手作りされたお店の看板、街、建物たち……。今回はどんな話が始まるのかと胸が高鳴ります。また、1話だけでしたが美園の頭の中の空想シーンで登場した地図や、様々なチェーン店を表現する衣裳など、美術スタッフの遊び心が反映されていてとっても魅力的です。

 美園が勤務する会社は「まつまる漬物」という漬物会社なのですが、その会社のロゴも良い漬物を漬けている入れ物がモチーフっぽい、何とも言えない渋さとおしゃれさですし、個人的にツボだったのは会社のイメージキャラクターでもある「らっきょう子ちゃん(駒井蓮)」のポスターや等身大パネルやグッズがオフィスの至る所に必ずあるところ。オフィスのシーンではどのカットにも映っているのではないでしょうか。

 実際に「会社って、ポスターやパネル、グッズとかこんなに要るの……?」という時ありませんか。なんだかあるあるで素敵なセットだな~と思いました。

 また、特筆すべき可愛さがあるのが毎話のED映像。

 その回に登場する“チェンメシ”の実店舗でエンディングテーマに合わせて主人公・美園が本当に可愛らしく踊るのです。メインのゲストたちも曲に合わせて一緒に踊ったり、本物の美園だ! とはしゃがれたり、それを恥ずかしがったり。話の続きが描かれているように、次回予告が終わるまで毎話違った形で楽しませてくれるのです……!

 最初から最後まで余すことなく飽きずに楽しませてもらえる、遊び心に◎です!

興味深すぎる俳優陣 ◎

「お耳に合いましたら。」公式HPより。
「お耳に合いましたら。」公式HPより。

 主人公を演じる伊藤万理華、彼女が務める会社の先輩を演じる中島歩……。この二人が興味深すぎます。

 まずは伊藤万理華。彼女は素朴な雰囲気なのに、とってもフォトジェニックな印象を受けました。彼女自身が周りの目線を集めようと頑張っているというか、もがいている感じは全くありません。しかし、彼女の美味しくてとろけそうな表情を見ると「よかったね~」としみじみ感じますし、困難にぶつかってむくれている顔や困っていたり騒いだりしているのを見ると、子供が駄々をこねているのを見ているような気になって思わず微笑んでしまいます……。

 コロコロ変わる彼女の表情に翻弄されてしまいます。これはあざとさなのでしょうか……。違うのかしら……。たぶん、彼女の魅力は努力するだけでは到達できないもので、持って生まれた才能だと思います。もっといろんな顔を見せてほしい!! と思わせてくれる女優です。

 そして、中島歩といえば「死役所」の第6話「カニの生き方」で、一見不愛想ですが心優しい不器用な男を演じている印象が強くありました。手足が長くてスタイルは良いし、顔も整っているのに、今回のようなちょうどよく残念でウザいイケメンが似合う! なぜ……?

 メインだったドムドムバーガーの回では、調子の乗りかたがちょうどよくウザいし、バーガーを頬張って口の周りと歯にソースがついているのもちょうどよく汚い……!! このちょうどよさは何なのでしょうか。

 お二人とも興味深いし、もっと見たい。思わず◎です。

畑中翔太氏が作り上げる世界観 ◎

「レジェンドが出てくる」、「女の子が頑張る」。この2つの共通点に見覚えがあったのでピンときましたが、こちらのドラマの原案・企画・プロデュースは同局で同クールに放送されていた「八月は夜のバッティングセンターで」も担当している畑中翔太氏でした。

 ほかにもAbemaオリジナルドラマ「箱庭のレミング」で企画・脚本を担当していたり、ジャニーズWEST「Wtrouble」ではクリエイティブディレクターを務めていたりと、視聴者やファンをぐっと引き込む世界観づくりが秀逸な方だなと思います。この方のドラマ、もっともっと見てみたいです。そんな期待も込めて、僭越ながら◎を付けさせていただきます。

総評 ◎ ごちそうさまでした!

 「お耳に合いましたら。」は、飯テロドラマの側面も持ちつつ、主人公・美園を中心に個性的なキャラクターが勢ぞろいして送る青春ドラマを見ているようです。お互いが自分の“好き”をとことん突き詰めながら尊重し合って、困難を乗り越え、喜びを共有して、仲良くなって、仲間が増えて。

 なんだかこれだけ読むと少年漫画のストーリー解説みたいですが、美園の周りの小さな世界やラジオでつながる人々との繋がりの中で巻き起こる出来事が凝縮して描かれていて、それをラジオを通して共有してもらえているような気持ちになります。

 ドラマで描かれているちょっとした楽しみである「チェンメシ」や「ラジオ」は、画面の中の世界だけではなく、ドラマを観た後に私たち自身がもう一度実際に楽しむことが出来るのが、このドラマの素敵なところです。

 いよいよ次回は最終回。

 美園がポッドキャストを始めるきっかけをくれた同僚で親友の亜里沙(井桁弘恵)は転職、音響機器を一緒になって探してくれた後輩・佐々木(鈴木 仁)は鳥取へ転職することになり、それぞれがバラバラに。最終話直前の次回予告では、ポッドキャストも終わってしまうような感じでした。でも、三人とも楽しみを噛み締めるかのような最高の笑顔で……。

 思わず微笑んでしまうようなドラマほど、終わって欲しくなくて最終回が訪れるのが切なくなりませんか?夏休みの終わりにおばあちゃんの家から帰る時みたいな……。

 でもやっぱり、また彼女たちに会いたくなります。もうやみつきです。最終回も楽しみです。でもやっぱり、終わらないで欲しい!!

畑井 優

ドラマ制作に携わりながら、ドラマをこよなく愛するドラマ大好きっ子。20代女子。好きなドラマのジャンルはミステリー。一番好きなドラマは「Nのために」(TBS 2014年)。

Column

ドラマ大好きっ子・畑井 優の
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ライフワークがドラマ鑑賞で、新しく素敵な俳優や監督、脚本家やスタッフを探して推すのが趣味という畑井優さんが、今クールのドラマの見どころを徹底紹介! 通信簿をつけていきます。

2021.09.29(水)
文=畑井 優